「満席の場内はほぼ10~20代の女性のお客様ばかりで驚き。 若い世代にしっかりと受け継がれているようで、なんだかこちらも嬉しくなりました。」魔女の宅急便(1989) 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
満席の場内はほぼ10~20代の女性のお客様ばかりで驚き。 若い世代にしっかりと受け継がれているようで、なんだかこちらも嬉しくなりました。
約65年の歴史に幕を下ろす丸の内TOEIさんにて『さよなら丸の内TOEI』と題した特集上映が開催中。
本日は『魔女の宅急便』を劇場大クリーンで鑑賞。
『魔女の宅急便』(1989年/102分)
『ナウシカ』『ラピュタ』『トトロ』『火垂るの墓』に続くスタジオジブリ第5弾。
過去作の劇場公開を見逃していた私の周囲も爆発的に普及したレンタルビデオで後追い、すっかりジブリ作品に魅了された好機に公開された作品。
「クロネコヤマトの宅急便」、ヤマト運輸がスポンサーを快諾、日本テレビも本作から制作に参加したことで、今まで以上の大規模な広告宣伝展開が張られ、以降ジブリの新作公開自体がイベント化されたのも本作でしたね。
主題歌は松任谷由実氏が荒井由実時代にリリースした『ルージュの伝言』『やさしさに包まれたなら』。当時の松任谷氏はリリースするアルバムはすべて第1位、アルバム売上記録を更新するなど時代の寵児。
楽曲と作品の相性もバッチリですが、超大物アーティスト起用の意外性に驚いた記憶があります。
このあと『もののけ姫』(1997)、『千と千尋の神隠し』(2001)でさらに日本中が熱狂しますが、本作がジブリ最初の最高潮だと思いますね。
ストーリーも「世界名作劇場」の『アルプスの少女ハイジ』や『赤毛のアン』の流れをくむような「魔法」という特技と個性を持つ思春期の少女が、優しい周りの人々に励まされながら、心の葛藤や不安を乗り越えて、一歩ずつ大人になるための自分探しの成長譚。
キキを助ける街の人々も実に穏やかで魅力的、宮崎駿監督お得意の飛行シーンも一段と磨きがかかっていますね。
舞台も北欧、イギリス、パリ、ナポリの風景を織り交ぜた架空のヨーロッパですが、実際に魔女が存在していてもおかしくない街並みで、背景だけでもずっと観ていたくなるほど美麗に描かれています。
後半黒猫ジジが人間の言葉をしゃべれなくなったのはキキが大人に成長したからだと思いますが、そのような演出も実に上手いですね。
もう公開から35年近く経過、今回の復活上映もご年配の方ばかりの来館かと思っていましたが、満席の場内はほぼ10~20代の女性のお客様ばかりで驚きましたね。
若い世代にしっかりと受け継がれているようで、なんだかこちらも嬉しくなりました。