劇場公開日 1989年7月29日

「私は贈り物のフタを開ける時みたいにワクワクしてるわ」魔女の宅急便(1989) とびこがれさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私は贈り物のフタを開ける時みたいにワクワクしてるわ

2022年4月30日
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鑑賞方法:TV地上波

 いいですね、魔女見習いの女の子が頑張る物語。全編通して現代萌え絵でリメイクして頂けないでしょうか。もちろんこのままでも可愛い。
 「私は贈り物のフタを開ける時みたいにワクワクしてるわ」について。ワクワクって、心の内から沸き立ってきて勝手に体が動いちゃうような体験ですよね。冷静とは程遠い。なのにこんな長くてきれいな比喩が前に来てるのは、とっても独特だと思います。それは、キキの長い歴史を想像してはじめて理解できます。ワクワクが常態化している。いつかのことだと心踊らせた時期から、今は具体的な予定としてタイミングを計っている時期に来ています。興奮しているけど冷静、これは長い時間ずっと情熱を注いではじめて現れる現象で、この台詞の文と言い方だけで、キキのこれまでの時間が表現されているように思います。
 それから、プロペラ自転車を必死でこぐトンボ少年を見て大ウケする通りすがりのおじさん。あのおじさんの「笑い」を創作物のなかに、言い換えれば意図的に表現するのは圧倒的宮崎駿だなと思いましたね。あれは日常の中に突然非日常なものと出くわした時に出るものです。「なんかよくわからんけど爆笑した」ってやつです。生理的嫌悪の逆、生理的好意とでも言いましょうか。とにかく、あれは感情の動きでもなく、本当にただそこにある叙事的なもので、全てがシンボルとして現実に対応するアニメーションにおいて存在するのはびっくりしますね。カメラだったら、写っちゃったりすると思いますけど。僕はまだまだ創作の中にアレを入れようという発想には、枠が追い付いていませんね。

とびこがれ