劇場公開日 2024年12月27日

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「「紅(赤)」に対するこだわりは服装、酒の色から肌の色まで「これでもか!」と徹底されていますね」紅いコーリャン 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「紅(赤)」に対するこだわりは服装、酒の色から肌の色まで「これでもか!」と徹底されていますね

2025年2月17日
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鑑賞方法:映画館

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『紅いコーリャン』 (1987/中国/91分)
チャン・イーモウ(張芸謀)監督、コン・リー(鞏俐)のお互いのデビュー作であり、初コンビ作品。

1930年代末。ラバ1頭で親子ほど年の離れたハンセン病患者の造り酒屋の主に売られ、嫁ぐことになる若い娘(コン・リー)が、御輿での嫁入りの道中に強盗に襲われるが、御輿の担ぎ手の男(チアン・ウェン)に救われ、互いに惹かれ合う。
その後、造り酒屋の主が行方不明、娘は造り酒屋を継ぎ、担ぎ手の男と結婚。子を産み幸せな日々が続くが、そこに日本軍が侵攻、平和を脅かす…という話。

一面荒涼とした砂漠とコーリャン畑の緑のなかに鮮烈な印象を残す数々の「紅(赤)」の色彩を強調した映像と人間の本能と情念の発露が実に見事に融合されています。
「紅(赤)」に対するこだわりは服装、酒の色から肌の色まで「これでもか!」と徹底されています。
大まかなストーリー設定、人間の情念の描かれ方、艶やかな色彩感覚は次作『菊豆(チュイトウ)』(1990)でさらに洗練されて昇華されますね。

本作がデビュー作のコン・リーはデビュー作と思えない貞淑な少女から頑健な酒屋の主まで振り幅の広い演技を披露。
『宋家の三姉妹』(1997)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のチアン・ウェンも粗野で野性味溢れる演技が実に魅力的でしたね。

公開当時(1987)はまだハンセン病に対する誤った知識や偏見、差別もずいぶん残っており、また不穏分子の皮を生きたままはぐことを指示する旧日本軍の鬼畜な描かれ方など目を覆いたくなるシーンも多々ありますが、公開当時の時代の空気感は大事なので、ぜひとも配信などでも気楽に観られるようにして欲しい作品の一本ですね。

矢萩久登