「心を刺す紅、赤、薄赤」紅いコーリャン talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
心を刺す紅、赤、薄赤
中国、香港の映画は赤の使い方が独特で上手い。美しい、怖い、誘惑する、強い、悲しい、幻惑する。コーリャンが旨い紅の酒のもとになる。一面緑だったコーリャン畑を強引に潰させられて土だらけになり車が走る場所になる。仲間の殺害を強要され血の海になる。復讐の真っ赤な爆発が起きる。銃で撃たれてたくさんの人間が赤い血を流して死ぬ。
紅の嫁入り衣装、頭から被り顔を全部隠す紅の布、花嫁を運ぶ紅の輿、刺繍された花嫁の紅の布靴。紅に包まれた九(コン・リー)の若くて純粋なふてぶてしさと強さにとても惹かれる。酒造りの親方として若い衆を大事にし指導力を発揮する女、酒造り職人の番頭を尊敬する女、自分で夫を選んだ女、息子を可愛がる女。音楽は流れない。聞こえるのは短い台詞と酒造りの男たちの歌、花嫁を載せた輿を担ぐ男たちの歌。その男たちに囲まれて女は将来の夫を自分の目で選んだ。
空には満月だったり少し欠けた月だったりが空の真っ正面に浮いている、いや、貼りついているようだった。風にサラサラとなびくコーリャン畑。赤茶けた土。挟み込まれるコーリャンと大地と空の美しく荒々しい映像が効果的だった。地平線が見える大地の逞しさを見せつけるかのように。インドにもモンゴルにもそんな風景を挟み込んだ映画があった。
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