青の稲妻

劇場公開日:

解説

前作「プラットホーム」で80年代の中国の若者たちをビビッドに描いて高い評価を得たジャ・ジャンクー監督が、再び中国の地方都市を舞台に、現代の若者たちの不安や焦燥を等身大で見せる青春ドラマ。2001年の中国山西省・大同(ダートン)。経済的、国際的にも急成長を遂げた現代中国の地方都市で、期待と恐れ、社会への矛盾とを抱え苦悩する2組の若者が、未来に立ちはだかる大きな壁に立ち向かう姿を描く。「好きなように生きる」という歌詞が受け、大ヒットした台湾の曲「任逍遥」が劇中印象的に使われる。第55回カンヌ国際映画祭正式招待作品。

2002年製作/112分/中国・日本・韓国・フランス合作
原題または英題:任逍遥
配給:オフィス北野,ビターズ・エンド
劇場公開日:2003年2月1日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第55回 カンヌ国際映画祭(2002年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ジャ・ジャンクー
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(C)2002 LUMEN FILMS,E-PICTURES,BITTERS END

映画レビュー

2.0「一瞬の夢」の続編としての本作

2018年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

 「一瞬の夢」「青の稲妻」。この二作品は連作とも言える。何故なら、「一瞬の夢」の主人公、小武のその後の姿と解釈できる人物が「青の稲妻」に幾度も登場するからだ。
 「青の稲妻」の冒頭で、主人公の若者は、ある男から仕事の口について情報を聞く。町の金融業者を名乗るサングラスのその男はすかさず「情報料」を請求してくるが、若者がいまは持ち合わせがないというと、その一言だけで金の回収を諦めてしまう。何とも中途半端で、本気で請求する気があったのか、冗談だったのか良く分からないまま映画は先へ進む。
 その後、この男が公安に逮捕されるシーンがある。本人も周囲もたいして騒ぐ様子がない。しかも、しばらくすると何事もなかったかのように、また若者たちや観客の前に姿を現すのだ。まるでトイレにでも行っていたかのような、至極当然な顔をして戻ってくるのだ。
 主人公の若者らは男のことを「ウーさん」と呼んでいる。
 さえない若者を相手に金をせびり、しかもそのことを容易く諦めてしまう根性のなさ加減。当たり前のように逮捕され、また当たり前のように町に現れる。これが「一瞬の夢」の主人公・小武その人でなくて誰であろうか。
 映画の終盤、主人公がおそらく海賊版であろうビデオソフトを自転車に載せて売り歩く。そこへ「ウーさん」が買う気も無さげに、「一瞬の夢は?プラットホームもない?学生相手にその品揃えはないだろう」と絡むのだ。
 「ウーさん(を演じたワン・ホンウェイ)」にしてみれば、かつての自分の主演作が未扱いなのは我慢ならないという、二つの映画の世界が一続きとなるギャグとなっている。
 ギャグと言えば、「稲妻」の爆弾を腹に巻いて銀行強盗に臨んで手にはライターがないというオチと、「一瞬」の不意に鳴ったポケベルのせいでスリに失敗してしまうことは、二つの映画の終盤のプロットが似ていることを気付かせる。
 つまり、この若者も結局は「ウーさん」並の小さな犯罪を積み重ねて生きていく男になることが暗示されている。

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佐分 利信