「弱者の連帯」アウトロー(1976) odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
弱者の連帯
南北戦争末期、北軍のゲリラが罪もない婦女子を虐殺、彼らの方が正真正銘の卑劣な犯罪者だろう。主人公のジョジーウェールズ(クリント・イーストウッド)のことをアウトローと言うがそもそも法など有名無実、当時の法は銃という暴力であったことは間違いない、しかも時を経た現代でもその法は脈々とアメリカ社会の中で生きていよう。
家族を目の前で惨殺されれば復讐の鬼と化すのに理屈は要らない、クリントならすぐにでも決着をつけると思いきや追われる身とは情けない。道中、虐げられている同類を救って逃避行は続くばかり。
原作者のフォレスト・カーターはチェロキーの血を引いているからだろう、劇中でもネイティブ・アメリカンが重要な役割を演じている。
主人公が先住民を不憫に思うのは侵略者としての良心の呵責もあるのだろうか。南北戦争は黒人奴隷解放が争点の一つだったが南部ではチェロキーも白人の真似をして黒人奴隷を虐待していた事実は語られない。リンカーンもまたネイティブに対しては冷酷だったというからどっちもどっちだろう。アメリカに限らず人間の歴史は一皮むけば暗黒史なのだろう。
北部の象徴のような牧場主の夫人一家も交えてイーストウッドの仲間たちは軋轢を超えて一つになる、これこそがイーストウッドが言いたかったテーマなのかもしれない。
最後になってやっと仇の方からお出ましだが弱者が連帯して見事仇討達成、追っ手も手を引く幕切れだが、クリントも無傷ではない、生き延びたのか、皆のもとに帰ったのか、はたまた放浪を続けたのかは語られない・・。
脱線ネタだが、クリント・イーストウッド監督5本目だが途中まではフィリップ・カウフマンが監督だったがローラ役のソンドラ・ロックを巡って対立、カウフマンが途中降板となり訴訟騒ぎ、クリント側は6万弗の罰金となった、全米監督組合は「映画の撮影開始後に、監督を降板・交替させる事は禁止」と言うルールを明文化、本作にちなんで「イーストウッド・ルール」と呼ばれているそうだ。ソンドラ・ロックとの関係は12年間続いたようだが結婚に至らず慰謝料訴訟を起こされている。美談が好きな割には妻2人、愛人6人、子供7人、孫2人と私生活はハチャメチャだ。まあ、作品と下半身の人格は関係が無いのだろう。