「日本(大阪)で撮影されたリドリー・スコット監督のハリウッド超大作以上にバディ映画としても不朽の名作ですね。」ブラック・レイン 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
日本(大阪)で撮影されたリドリー・スコット監督のハリウッド超大作以上にバディ映画としても不朽の名作ですね。
劇場公開から35年周年の『ブラック・レイン』国内上映権が25年1月末をもって終了するとのことで、シネマート新宿さんへ。335席のスクリーンは満席。すごい熱気のなかでの鑑賞。
『ブラック・レイン』(1989)
今では隔世の感がありますが、公開当時(1989年)は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」日本経済黄金期で『ガン・ホー』(1986)、『ロボコップ』(1987)、『ダイ・ハード』(1988)などハリウッド大作でもアメリカを脅かす<経済大国・日本>が頻繁に描かれていましたね。確か『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する車や家電もほぼほぼ「メイド・イン・ジャパン」でした。当時はそれが当たり前、今思えば実にいい時代でした…。
そのような時代背景なかで『ブレードランナー』で近未来の日本(歌舞伎町)を創出したリドリー・スコット監督が実際に日本(大阪)で新作を撮影されると聞いて胸を躍らせましたね。
キャストも当時『ロマンシング・ストーン』『危険な情事』『ウォール街』とヒットを連続したマイケル・ダグラス。
日本からは高倉健氏、松田優作氏、神山繫氏、若山富三郎氏と豪華な布陣。
個人的には『アンタッチャブル』のジョージ・ストーンでブレイクしたアンディ・ガルシアの新作が観られることが当時は一番嬉しかったですね。
約20年ぶりに鑑賞しましたが、こちらが歳を取ったせいか作品印象ががらりと変わりましたね。
まず一つ目は当時ありがちな<可笑しな国・日本>ではなく、当時の日本の風景や文化を一切誇張せず、ありのままに切り撮り、<幻想的で不思議な異国・日本>を見事描いた撮影監督のヤン・デ・ホンは流石。
今ではすっかり様変わりしましたが阪急梅田駅や心斎橋、十三などが当時のまま撮影され歴史的価値も高いですね。
日本側のキャスティングも高倉健氏、松田優作氏をはじめ、刑事部長役の神山繫氏、関西ヤクザの首領役の若山富三郎氏、子分役の内田裕也氏、ガッツ石松氏と適役でしたね。
松田優作氏の全身から狂気が漲り鬼気迫る演技は最大のみどころですが、180㎝の体躯の良さもありますが、国際スターのマイケル・ダグラスに一歩も引けを取らない高倉健氏の圧倒的存在感は今回の鑑賞で一番驚いたところですね。ガンアクションも『野生の証明』で実証済、痺れました。もっと別のハリウッド大作も観てみたかったですね。
大阪府警察本部刑事部長役の神山繫氏の実に日本らしい官僚的上役も実にリアル。
脚本段階で日本の実情をしっかりと研究していましたね。
ストーリーも『夜の大捜査線』(1967)、『ゴリラ』(1986)、『ミッドナイト・ラン』(1988)同様、互いに立場や状況、文化が違う者同士の事件を通じたバディ映画、熱い友情譚ですが、本作は特に文化違いや障壁が明確で困難を乗り越えた上での互いの理解と友情の芽生え、それを凝縮したラストの空港での別れがグッときますね。
日本(大阪)で撮影されたリドリー・スコット監督のハリウッド超大作以上にバディ映画としても不朽の名作ですね。