劇場公開日 1989年10月7日

「アメリカの独善的な一面を鋭く描いた一本?」ブラック・レイン talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0アメリカの独善的な一面を鋭く描いた一本?

2023年5月12日
PCから投稿

本作のリドリー・スコット監督は、ひょっとするとご自身は、アメリカという国が(いかに敵国・日本に対してとはいえ)原爆を投下したことには批判的な見解をお持ちの方なのかも知れないと思いました。評論子は。本作を見終わって。あくまでも、評論子個人の勝手な憶測なのですけれども。

評論子の理解によれば、アメリカという国は、これまでに独善的な行為を重ね、何度も他者(他国)に甚大な影響を与えてきていると思います。
評論子が思いつく限りでも、
○本作にも関わる日本への原爆投下
○沖縄戦での人(日本兵)に対する火焔放射器の使用
○ベトナム戦での枯葉剤の大量散布(いわゆる「ベトちゃん・ドクちゃん」の問題)
○ビキニ環礁での水爆実験(いわゆ第五福竜丸の被爆問題)
○モーリタニアン基地でのアメリカ軍による(被疑者の人権を無視した)不当拘束の問題
(注)この件は、別に映画化もされていることは、映画ファンの皆様には、すでにご案内のところです。
『モーリタニアン 黒塗りの記録』

実は、本作については、邦題に、最初は違和感がありました。本作の邦題になっている、まさにその「黒い雨」によって人生を狂わされ、重い後遺障害に苦しむ方がいらっしゃるその国(日本)で、そのものズバリを題名とすることが、それらの方々に対する配慮を欠かないか…ということてす。
しかし前記に掲げたようなアメリカの独善的な行為が、仮にアメリカという国の価値観の発露に基づく行為そのものの謂であれは、邦題をこのように設定したことは、むしろ本作の正鵠を得ているのではないかと、思い直したりもしていました。

つまり、本作の佐藤(故・松田優作)か、自分の価値観に基づく独善的な行為を躊躇なく選ぶ行動をとる者の、いわば「代表格」として描かれていると考えると、彼の身の振り方にも合点が行きますし、彼が本作の中で無軌道に暴れまわることも、評論子にも理解ができるように思います。(まさに、そこが松田優作の「狂気」とも言えるような渾身の演技。)
戦前からの「仁義」や「任侠」「義理・人情」を重んじる、いわば戦前タイプのやくざとは一線を画するということで、作中の菅井親分(若山富三郎)のあのセリフになったということなのだと思います。
そう考えれば、アメリカという国が時として垣間見せる「(その価値観に基づく)独善さ」を鋭く描いた一本として、簡単に奥行きの深浅を評することのできない一本ではなかったと思います。。
見終わって、深い深い思念が残る一本になりました。評論子には。

<映画のことば>
「盗みは盗み。グレーゾーンはない。」
「ニューヨーク自体が巨大なグレーゾーンみたいなものさ。」

上記の評論子の理解からすれば、いわば「脇筋」なのですけれども。
 カタブツだった松本警部補(高倉健)と、刑事としてはいささか「アウト・ロー」だったニック(マイケル・ダグラス)とが、お互いがお互いに感化されて行くプロセスが、なんとも言いようがなく、温かい一本になりました。最後のニセ札の原版の扱いなどは、胸アツものでした。評論子には。
格好よくいえば「男同士の友情」みたいなものだったでしょうか。

talkie
talkieさんのコメント
2023年11月30日

うわあああああぁ~やってしまった!
レビューは、さっそく修正させていただきました。
トミーさん、ご指摘ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。

talkie
トミーさんのコメント
2023年11月29日

リドスコはイギリス出身だと思いますが、彼がこういう題名にしたと考えると意味深ですね、酸の雨も描いた人ですし。

トミー