劇場公開日 1998年2月28日

フェイス/オフ : 映画評論・批評

2020年11月3日更新

1998年2月28日よりロードショー

ジョン・トラボルタ&ニコラス・ケイジの“両極演技”に震える、ハードな入れ替わり物語

巨匠ジョン・ウーのハリウッド出世作となった「入れ替わり物語」は、極めてハードである。青春譚の始まりとなるような心と心のチェンジではなく、血と暴力に満ちた顔と顔のチェンジ。しかも「顔面を剥ぐ(フェイスオフ)→移植する」という驚愕の手法で入れ替わる。荒唐無稽にも思える設定だが、“バイオレンスの詩人”は自らのカラーを全面に取り入れ、一級のエンタメ作品へと昇華させてみせた。

物語の主軸となるのは、冷酷無比のテロリストとして名を馳せるキャスター・トロイと、彼に息子を殺されたFBI捜査官アーチャーの因縁だ。6年の歳月を経て、アーチャーはトロイを確保するのだが、時限式の細菌爆弾の脅威が残されていた。苦悩するアーチャーは、昏睡状態のトロイの顔を自身に移植し、爆弾の在り処を知るトロイの弟に接触する。しかし、覚醒したトロイもアーチャーの顔を移植。最も憎悪する互いの顔を取り替えた2人が死闘を繰り広げていく。

本作は冒頭からクライマックスといっても過言ではない。アーチャー息子射殺事件を活写した後、その間に起こったであろう執念の捜査劇をカット。時系列はすぐさま6年後へと飛躍し、ド迫力の追走劇が描かれていく。ロングコート×二丁拳銃アクション、スローモーションの多用といった“ジョン・ウー印”を空港でさく裂させ、ひとまずの終幕へ。リスタートする「入れ替わり物語」を経て、教会で白鳩と銃弾が舞い、水上のボート・チェイスに結実。2度もクライマックスが堪能できるような“オイシイ構成”だ。

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アクション面だけでなく、ドラマパートにも注目したい。入れ替わったトロイとアーチャーが、それぞれのプライベートへのカンフル剤となっている。仕事優先のため、妻と娘との関係に悩むアーチャー。その状況を意図せず改善するのは、彼の顔をまとったトロイだ。本性を露にしていない状態では“チョイ悪パパ”として機能してしまう。一方、トロイの顔を被ったアーチャーの恩情は、裏世界の住人たちを刺激。実際のトロイでは生み出せないリアクションを引き出してみせる。この予期せぬ効果が面白い。

何よりもトラボルタとケイジの“両極演技”に震えるはずだ。時に極悪、時に正義。その演じ分けが凄まじい。顔を入れ替える前と後では、確かに「その中身が違う人物である」ということがひしひしと伝わってくるのだ。完全に振り切っているトロイに扮した際の狂気、自らに張り付いた宿敵の顔に葛藤するアーチャーとして表現する哀切。2人の演技力に、改めて敬意を表したくなった。

岡田寛司

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