劇場公開日 1994年4月23日

「肝心の論点に触れるシーンが少ない印象」フィラデルフィア 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0肝心の論点に触れるシーンが少ない印象

2024年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 対象を嫌いであっても構わない。しかし、だからといって相手の不当な扱いは許されないという、当たり前だがないがしろにされがちなテーマを扱っている作品。同性愛嫌いな黒人弁護士ジョーも、今回の訴訟を通じて、そのテーマについて考えさせられたのではないだろうか。

 ストーリーはというと、訴訟における肝心な論点に触れるシーンが少ない印象で、まどろっこしさを感じた。論点は①原告が不当解雇だと主張する根拠となる書類隠蔽の真偽について②同性愛を理由に解雇に至ったと言える証拠、の2つだろう。

 ①に関していつ誰がどのように行ったのか分からず解決しない。②に関しても、原告アンディがクラブにおける上席の同性愛差別発言を聞いた程度の、形に残らないものしかない。にもかかわらず、論点以外の、例えばどういう経緯で法律事務所に入所したのかといった話が多い。

 ①②に関して明白な証明がなされないまま、結局差別はいけないという感覚的な理由で陪審員の評決が下された印象を受けた。そのため、昨日観た同じ法廷ものの『レインメーカー』と比較すると物足りなさを感じた。もっと論点の追及やことの真偽の証明にストーリーの焦点を絞った方が、納得感のあるストーリーになったのではないだろうか。

根岸 圭一