「あからさまな結審までの裁判の推移に寄り過ぎた結果…」フィラデルフィア KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
あからさまな結審までの裁判の推移に寄り過ぎた結果…
今は余り聞かなくなったが、
以前は性的接触以外でも
輸血がエイズ感染源として問題になっていた
ことが思い出される。
現在はそれほど心配するほどの
状況では無いのだろうか。
この作品、監督は「羊たちの沈黙」の
ジョナサン・デミで、
トム・ハンクスにアカデミー主演男優賞を
もたらした作品ではあるが、
「羊…」と比較すると、
何ともポイントを絞り切れていない、
前回の鑑賞と同じような印象が残った。
エイズ裁判を通じての
友情に昇華した2人の弁護士の裁判劇なのか、
或いは裁判劇を媒体として
エイズ感染者と周りの方々の心模様を
描いたものなのか、
裁判の争点が、
法律事務所が主人公を解雇したのが
彼の能力への判断だったのか、
或いは感染を理由としたものだったのか、
というあからさまさからすると、
多分に後者にウエイトを置いた作品
なのだろうが、
その割には、本来はシンプルなはずの結審
までの裁判が余りにも寄り道のし過ぎで、
特異な病気の主人公を取り巻く人々の描写を
戸惑い~共感のレベルで、
上手く整理しないままに
完成させてしまったような作品に感じた。
テーマこそは若干異なるが、
例えば、尊厳死問題に迫った「海を飛ぶ夢」が、登場人物の想いへの寄り添いが
容易だったのに比べて、
この作品では、
トム・ハンクスの熱演にも係わらず、
登場人物に寄り添うための演出と構成が
弱いのが残念に思えた。
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