「恥じ入ることはない、という生き方」フィラデルフィア 昭和ヒヨコッコ砲さんの映画レビュー(感想・評価)
恥じ入ることはない、という生き方
トム・ハンクスは体格の良い印象が強いが、ここまで痩せるとは…
昔観た時は気付かなかったけど、恋人アントニオ・バンデラスだったのか…
1994年の作品ではあるけど、今観返すととても豪華な顔ぶれ。
本編はAIDSと不当解雇と差別の話が中心になるが、本質はそこにはなく、「誇りを持って生きること」について描かれた作品だと私は感じる。
(AIDSになる過程についても特に描かれていない)
近年ではコロナが流行し、その情報の錯綜っぷりを体験した。
更にサル痘の流行には同性愛者間での感染が多く報告もされた。
更に更に梅毒の流行には同性異性に関わらず、性交による公衆衛生を乱す事例が多発した。
「今となっては間違いだったと分かるAIDSへの偏見」ではなく、ここ最近の世相から「よく分からない病気」や「公衆衛生への打撃」と置き換えてみれば、恐怖や忌避感をよりリアルに感じられるだろう。
果たして自衛の手段として罹患者から距離を取ることはどの程度まで許されるのだろうか?
逆に自分が「よく分からない病気」に罹った時にどのように立ち振る舞えるだろう?
きっと自分が罹った経路や病気について沢山調べるだろう。
しかし、それは自分だけの知識でしかないし、それを正しいと客観的に認定できる知識が自分にあるだろうか?
他人に過不足なく正しく伝えることが出来るだろうか。
バイアスから都合の良い情報ばかり集めてしまうかもしれない。
そんな話を真正面から受け止めてくれるのはよほど親しい仲の人物か家族だけだろう。
周囲から忌避されるようになっても、私は堂々と生きていけるだろうか?
「誇りを持って生きること」を全うした主人公アンドリューの最後の台詞がとても印象的だ。
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