ファーゴのレビュー・感想・評価
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私たち夫婦は幸せね…
午前十時の映画祭11にて。
カンヌ国際映画祭では監督賞、米アカデミー賞では脚本賞と主演女優賞を得た、コーエン兄弟としては久々のヒット作だった。
当然、リアルタイムで観賞しているし、傑作だと記憶していた。
…なのに、ロードショー公開以来観ていなかったのか、内容を全く覚えていなかった自分にビックリ。サム・ライミの『シンプル・プラン』と完全に混同してしまっていたのだ。
(見終わる頃に思い出した!)
お粗末な計画が意外なトラブルから大事に発展していく。この種の成功作品はいくつかあるが、本作は登場人物のキャラクターが強烈なだけに、発生するイシューとその対処のアイディアの奇抜さは群を抜いていると思う。
ご承知だと思うが、オープニングのテロップ「…事実を忠実に再現…云々」こそがフェイクであり、コーエン兄弟による巧みな観客の心理操作だ。
自動車ディーラーの営業マネージャーであるジェリー(ウィリアム・H・メイシー)が、いかにも怪しい二人組カール(スティーブ・ブシェミ)とゲア(ピーター・ストーメア)に妻の誘拐を依頼するところから物語は始まる。その密会の場所がファーゴという町のバーなのだ。
ジェリー役のメイシーは、後にテレビシリーズ「シェイムレス 俺たちに恥はない」で主人公の飲んだくれ親父を怪演している。
カール役のブシェミは、本作の直前に『レザボア・ドッグス』でメンバーの一人ミスター・ピンクを演じていた。本作では目撃者たちに「変な顔の男」と繰り返し言われて、気の毒だ。
ジェリーの車がファーゴに向かって行くオープニングや、カールとゲアが誘拐したジェリーの妻ジーン(クリステン・ルドルード)を車に乗せて移動する場面では、雪の夜道に平然と車を走らせていて、最近の首都圏の雪による交通麻痺のニュースを思うと、何だか“凄いな”と感心してしまった。
ジェリーの目的は、勤め先の社長であり金持ちである義父ウェイド(ハーヴ・プレスネル)から彼の娘でもあるジーンの身代金をせしめることなのだが、投資話に乗って儲けようとウェイドに出資を持ちかけていて、この話が二転三転するところからジェリーの浅はかな計画は狂い始める。
カールとゲアの二人組は昔からのコンビというわけではないらしく、ゲアの行動にカールは振り回される。
ジェリーに彼らを斡旋したのは前科者の整備工で、自分に捜査の手が回ってきたことを知った整備工にカールは痛めつけられたりする。
ジェリーは、義父のウェイドが全く自分を信頼していないことを知って、8万ドルの予定だった身代金を100万ドルにつり上げる。カールは予想外に高額な身代金を独り占めしようとするが、悲惨な結果となる。
と、まぁ、いわゆるドタバタ劇なのだが、これを引き締める役回りが主人公の警察所長マージ(フランシス・マクドーマンド)で、登場順はわりと遅い。
マージは若くはないが、妊婦だ。
夫のノーム(ジョン・キャロル・リンチ)との関係が良いのか悪いのかが最初は分かりづらい。が、この夫は、就寝中に呼び出されたマージに朝食を作ったり、ランチの時間になると警察署にやって来ていっしょに食事をしたりする。一体何をしている人なのか分からないのだが、仲は良いらしいことが分かってくる。警察署内でもノームの存在は認知されていて、勤務中に二人でいることが受け入れられている。
この一風変わった夫婦が、この物語を面白おかしくし、観客に「幸せとは何か」を問いかけるのだ。
夫ノーム役のリンチは、『グラン・トリノ』でイーストウッドの友人の床屋”イタ公“を演じた役者だ。
身重のマージは署長なのに単独でパトカーに乗って捜査をする。回りの警官たちは彼女の状況分析力を頼りにしている。
このマージが鋭い洞察力で徐々にジェリーに迫っていくのだが、浅はかなジェリーは容易に尻尾を出してしまうのだから情けない。
カールの行動も常軌を失っていき、ゲアはモンスターぶりを発揮していく。
小さな想定外が、瞬く間にとんでもない事態へと膨らんで、笑えない惨劇に行き着く。
このブラックユーモアなサスペンスは、金をめぐる欲深い人間たちの愚かさを滑稽に描いている。
なんの落ち度もなく命を落とすジェリーの妻と、一人残されたジェリーの息子が憐れだ。
一件落着し、マージはノームと一緒にベッドに入る。
ノームは趣味(か、本職?)の絵を切手のデザイン公募に応募していたようで、3セント切手に採用されたとマージに報告し、「3セント切手なんて誰も使わない」と自嘲する。
マージは自慢だと喜ぶ。「郵便料金が値上げされれば、不足分を埋めるために皆3セント切手を使う」と。
そして、平和な夫婦であることの幸せを噛み締めるように肩を寄せあって眠りにつくのだ。
人間はおかしくて、哀しい
“Humans are funny, and sad”, this is the movie blurb of Fargo in Japan when it went to roadshow. Wise, profound wording.
So, I’d been thinking like that way, too, for a long time since I watched the film long ago.
However, the other day I realised that might not be Coen brothers’ true intention when I re-watched the film and listened to its short theme in the beginning and in ending of the story, a few days back for the first time in cinema for a long time…
Listen to this, there is no funny or ironical element in this music whatsoever, just sad. It is as if the music is crying for the story. It is shedding tears for the sad destiny of the people who are about to be/have got involved in the pitiful but unforgivable crime.
Now I feel that film is about a total tragedy, and this is a profound masterpiece.
「人間はおかしくて、哀しい」、これは『ファーゴ』が日本でロードショーされたときの映画の宣伝コピーです。賢明で深い言葉。
私も昔この映画を観て以来、ずっとそんな風に思っていました。
しかし先日、本作を久しぶりに映画館で再鑑賞し、物語の冒頭とエンディングに流れる短いテーマ曲を聴いたとき、それはコーエン兄弟の本心ではないかもしれないと気づきました..。
聞くと、この音楽には笑いや皮肉の要素は一切なく、ただただ悲しいだけ。まるで音楽が物語のために泣いているかのようです。哀れな、しかし許しがたい犯罪に巻き込まれようとしている/巻き込まれてしまった人々の、悲しい運命に涙を流している。
今私は、この映画は完全な悲劇を描いた深遠な傑作であると感じています。
In thanking for English-Japanese translation
by DeepL.
ミンチは実話かーい。
自分の義父からお金を取るために自分の妻の偽装誘拐を計画したところとんでもない事態へと発展していく話。
まず「実話を元に」って最初に提示されてるけどこんな事件ないのが1番驚いた。劇中、多方にホラ吹きまくる夫のようにこの映画自体も最初からホラ吹きだったとは。
でも、死体を木を粉砕する機械に入れてるのはコーエン兄弟が着想として織り込んだ実際の事件でもあったらしくて、1番フィクションっぽいところはリアルなんか言って思った。人間ミンチからの人間ハンバーグが『キングスマン』で出てきてさすがにエグってなったのだが、本作ハンバーガーをマクドーマンドが食べてるシーンが2回出てきてより連想されたわ。
私はこの映画「銃を持てる社会」に対する疑問を投げかけてるように感じた。銃賛成派の主張として「もし銃を持った人が現れたらそれに対抗できるのは銃だけだ」っていう意見がよくあるらしいんだけど、この主張、義父が死ぬシーンで真っ向から否定されてる。撃たれて打ち返したけどそんな銃撃ったことない人が撃ってもちゃんと当たらんし、より激昂されるっていう。
手にすれば一瞬で人の命を奪う事が出来るという銃の魔力が、人を大胆な行動に突き動かせるし、自分は絶対的な力があると過信させる。ほんとに日本は銃が持てない国でよかった〜
あとはやっぱり、フランシス・マクドーマンドが可愛すぎる!その旦那さんもボーっとしてるけど、ちゃんと食料を提供してくれるの最高!
町山智浩さんの名講義付きで超お得‼️
2ヶ月ほど前に見た『悪なき殺人』のレビューでこの『ファーゴ』にほんの一瞬触れましたが、午前10時の映画祭のおかげで、劇場で見ることができました。ありがたいことです。
しかも、町山智浩さん(アメリカに住み、肌感覚でアメリカの情報を織り込んでくれる素晴らしい映画オタク‼️)の解説付きなので、ちょっとした大学の講義を聴講した気分。
超お得な1,500円‼️
フイルムノワールという言葉の成り立ちも、へーそうだったのか、ととても勉強になりました。
クライム系、男女の色恋、陰影効果で人物を受かび上がらせる、画面全体が暗い、それを見たフランスの人が黒い映画=フイルムノワール。
私の記憶力は、下手なうえに汚ないので判読不能な、自分でも読めないノートみたいなものなので、本当にそう言ってたのか自信はありません。
でも、これだけは読み取れました。
謎?の日系人ヤナギタの意味とは?
マクドーマンドは名探偵❗️
表情をよく観察すること。(速記なのでノートにはカタカナでヒョージョー、カンサツと書いてあるイメージです)
これだけならネタバレにはならないと思うので、ご参考までに。
※実話となる事件は、なかなか見つからなかったとのことですが、実は時間も場所も別々の3つの事件をミックスしたそうです。
間伸びしたyeahー
事件の凄惨さ、動機の馬鹿さ加減、雪が凍ったような道を走る車、景色、色々なものを観せてくれる。最後に幸せなカップルがもうすぐ生まれる赤ちゃんのことを考えている。
誘拐させる奥さんとの関係ってどうなのか?とか、あんな仕事をあんなお金でしてしまうのか? なぜあんなに殺しちゃう? とかはよくわからなかった。
午前10時の映画祭 前後に解説 町山智浩氏
マージが良かった
午前十時の映画祭11にて鑑賞。
1987年、ミネソタ州ミネアポリスで自動車販売店の営業担当をしているジェリーは、多額の借金を抱えていた。苦境を脱するために妻ジーンの狂言誘拐を企み、販売店の社長の義父から8万ドルの身代金を奪う計画を立てた。ジェリーは自社のメカニックであるシェプから紹介された、カールとゲアという二人のチンピラとノースダコタ州のファーゴで打ち合わせをし、身代金を山分けすることとして話をまとめ、さらに販売店から持ち出した車を報酬の一部として渡した。
二人はジーンを誘拐したが、ナンバープレートをつけ忘れていたため、パトロール中の警官に職務質問され、その際、ゲアが警官を射殺した。偶然に走行中の目撃者二人も追いかけて殺害した。
次の朝、ブレーナード警察署の署長であるマージが殺人事件の捜査に乗り出した。さてどうなる、という話。
誘拐事件が起きた時に警察に通報しようとする義父と、通報されてはまずいジェリーの会話が面白かった。
8万ドルが100万ドルになった悲劇も有るが、ま、ジェリーのバカぶりを楽しむ作品かな。面白かった。
キャストではマージ役のフランシス・マクドーマンドが良かった。
計画性のなさが思わぬ悲劇を招く
アメリカの田舎町で起こった実話を基に描いたクライムサスペンス。はじめは身代金を目的とした偽装誘拐が思わぬ事件に発展。計画性の無さが思わぬ悲劇を招く典型的な事例でしょうか。
(午前十時の映画祭にて鑑賞)
2022-26
被害者と加害者と、第三者
作品の主人公を誰として見るべきか、
見る側の感情移入の選択肢がある。
ストーリーの、
後味の悪い素晴らしい犯罪映画だった。
出てくる犯罪者も、
警察もみんなわきやくっぽくありながら、
僕としては、
犯罪者側のスティーヴ・ブシェーミに親しみを覚えた。
うまくいかない時は一切何もうまくいかないものだ。
被害者の悲しみはもちろんだが、
弁護の余地のない
加害者に対してもなぜか感情移入してしまう。
マイクヤナギタを考える
コーエン兄弟監督作品は初めて見ました。淡々と殺人が起きて大きな山場もなく進んでいく笑わせてきてないのに笑える独特な世界観が私には刺さりました。
そしてノンフィクションじゃないのか!と。
たった10秒の冒頭ですが、観終わった後にフィクションと知ってさらに作品のインパクトを上げる手法は面白い。
とにかく私の心に残るのは「ヤナギタのシーンを入れてきた理由は…」ということ。殺人事件の本筋には関わってこないヤナギタとの食事、その後の嘘だと知る電話。起承転結でいう転くらいでぶっ込んでくるシーンにしては弱い、何か意図があるんだろうと悩みに悩みました。
考えた私的結論は
①ヤナギタ…結婚も死別も嘘、妊娠しているのに詰め寄ってくるとんでもない人
②グリムスラッド…誘拐偽装のはずが警察官殺害でトガが外れとんとん拍子で人を殺めるとんでもない人
③マージ…犯人護送中「私には理解できないわ」は、①と②を含めた数日思い返し。→ラストシーン「(世の中とんでもない人もいるけど)私たち幸せよね」噛み締め。
こんな感じでしか考えられませんでした。
ネットの解釈を探していると、真っ当な人として描かれているマージが人は嘘をつくものだと再認識してジェリーに再度尋問しに行った。とか実はマージはヤナギタに惹かれていた(レストランで会う服装がいつもより小綺麗にしていたから?)とかいろんな解釈があるようです。
作品自体も好きでしたし、終わった後こうやって解釈を考えたり人と話す時間も映画の醍醐味ですよね。また忘れた頃に観て自分なりに自問自答したいと思います。
見事な作品でした
寒かったからでしょうか、久しぶりに観たくなってレンタルしました。
で、レンタルした後でプライムに上がっていた事に気づきました。軽くショック。
ちょっとした金をくすねる企みから狂言誘拐を計画、そこからどんどん闇に吸い込まれるような話。
舞台は自分にはあまり馴染みのないミネソタ州ミネアポリス。
この色の無い閉鎖感がまた良い雰囲気なんですね。
演出に派手さが無く、実に静かに進行しますがそれがまた良い。
緻密に絡み合った脚本が素晴らしく、実に深みがあります。
本当にこんな事件があったのかと疑うくらい、ひどすぎる負の連鎖。
そんな物語ですが、最後に少し光があるのが良かった。
本当、見事な作品でした。
そして後に知った元となる事件の真相、当時これは驚きましたね。
淡々と
お金=幸せ?
この作品はコレに尽きるな、と思います。
マージ&ノーマン夫妻と他登場人物の対比が良かったです。
マージと言うキャラクターの魅力が端々に感じられました。好きですねー。
堅実に生きていこうと身の引き締まる映画でした。
面白かったです。
借金苦から首が回らなくなり、妻を狂言誘拐することで、義父から身代金...
借金苦から首が回らなくなり、妻を狂言誘拐することで、義父から身代金を引っ張ろうとする、浅はかな主人公ジェリー。些細なボタンの掛け違いから事態は最悪の結末に向かっていき…。個人的には、ビッグリボウスキ、ノーカントリーと並んで、コーエン兄弟の三部作だと思う
ファーゴとは
洋画には「マルホランド・ドライブ」のように、地名を使ったタイトルが時々ある(邦画でもあったかもしれないが今は思いだせない)。タイトルだけではどんな内容かは全くわからないので、事前情報なしで見たい私にとっては都合が良い。
この映画はノーズダコタ州のファーゴという町のバーで、事件となる偽装誘拐を依頼するシーンから始まる。という訳で、タイトルのファーゴとは町の名前であることが分かる。ただ、映画のポスターから事件に関する物語だということが既に想像がついてしまっていたが。
誘拐事件、殺人事件の映画としてはそれほど面白くはなかった。特に、妻と義父までも殺されるのはちょっとやりすぎのような気もした。ただ、事件とは全く関係のないシーンが面白かった不思議な映画でもある。
主人公(女性警官)と同僚が、最初の殺人現場で、コーヒーを飲みながら現場検証をしていたり、車で移動中にジョークを言ったり(結局、字幕のJ3L2404のジョークは理解できなかったが)、夫のためにミミズを買ってやったり、昼食のビュッフェで、いちいち選ぶ料理をアップで撮っていたり(ある料理は躊躇して取らないシーンまであったのには笑ってしまった)、事件の情報収拾で出張して泊まるホテルで地元の刑事に昼食にいいお店を聞いたり、学生時代の日系?の元ボーイフレンドに会ったり、誘拐を持ちかけた夫がレストランで身代金渡しの深刻な会話をした後、満足でしたか?とレジ係に訊かれて、「うまかった」と答えたり、全体的にブラックコメディ仕立てになっていた点が特に面白かった。
ラスト、主人公夫婦の会話がいい。
(主人公が、3セント切手のデザインに採用されて鼻が高いと夫をほめ)私たち幸せな夫婦ね、愛してる、あと2ヶ月(子供が生まれるまで)。→ 身代き金の100万ドルより、価値のある3セントということかな。
あと気になったのが、偽装誘拐の理由が金に困ってとのことだったが、どんな理由で困っていたのか、また、犯人の一人が雪の下に隠した大金はどうなったのか。
独特な面白さ
自動車販売の営業マンのジェリーが妻の偽造誘拐を,2人の男に依頼することから物語が始まる。
ヘンな顔のおしゃべりな男と無口だけどキレると凶暴な男の2人組もなんともいえない面白さ。2人が道中で売春婦を買うのだけど、その2人の後のインタビューも面白い。
ジェリーの義父や弁護士とのやり取り、お客さんに対する仕事のいい加減さも笑える。
偽造誘拐のつもりが犠牲者が出てしまい、捜査を担当する警察官は妊婦さん。つわりがあったり、夫との会話がなんとも言えない可笑しさ。
爆笑する面白さではないけど、フフッて鼻で笑っちゃうような可笑しさが随所にあって独特なおもしろさがある。でも冒頭で実際にあった事件で名前以外は殆どが事実とあったが、こんなにコミカルな映画にしていいの?ちょっと不謹慎ではないか?
結局6人?殺されてしまった事件に発展。でもホントはこんな事件はなくて、冒頭の解説もストーリーの一部らしい!何てこった🤷🏻♀️
まんまと騙されちゃったよ😏
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