劇場公開日 2021年4月30日

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「これを観たら『墨東綺譚』の世界が高級リゾートにしか見えない!という一作。」愛のコリーダ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5これを観たら『墨東綺譚』の世界が高級リゾートにしか見えない!という一作。

2021年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

有名な映画だけどこれまで未見だったから、まぁこの機会に勉強程度に見ておくか、程度の軽い気持ちで観に行って、冒頭の老人のくだりから打ちのめされてしまいました。まず、この場面に一体何の意味が!?で、次にこんなあからさまな描き方、現代じゃ誰もやらないよ!という驚き。こりゃ当時、猥褻か芸術かという論争が起きたことも理解できます。

しかしもちろん本作は、単なる猥雑な作品などではなく、たとえば阿部定演じる松田英子と藤竜也の二人を描き出すライティングは一瞬見ただけでも心奪われるほど実に美しいです。一方で、ちょっとカメラが切り替わると、とたんに照明を直に当てた、粗雑な映像に繋がることが多々ありました。これは画調の一貫性が撮れていないようにも見えるのですが、それ以上に、主人公二人を美しく描き出すことに尋常ならざる神経を注いだ、大島監督の執念を感じさせました。

大島監督の待ち合いの描き方はお座敷を垣間見るような見方としても、そこで繰り広げられるむき出しの愛欲をのぞき見る見方としてもまったく容赦なく、本作に較べれば新藤兼人監督の『墨東綺譚』(1992)の遊郭が高級リゾートに見えるほどです(もちろん『墨東綺譚』も名作ですが)。日本だと審査に引っかかる可能性があるため、フランスからフィルムを輸入し、撮影後の現像、編集もフランスで行った、といったアンダーグラウンド的な逸話も滅法面白い作品です!パンフレットは『戦場のメリークリスマス』とセットになっていて、非常に価値の高い資料です。

yui