「タイトルなし(ネタバレ)」二十四時間の情事 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
鑑賞するのは今回が2度目。
初鑑賞は1986年、同監督『去年マリエンバートで』と2本立て、大阪の大毎名画鑑賞会だった。
第二次大戦終戦から十年経った広島。
薄暗がりの中で男と女が睦会っている。
女(エマニュエル・リヴァ)が言う、「わたし、ヒロシマで何もかも見たわ」
男(岡田英次)が答える、「きみは何も見ちゃいない」
男は建築技師。
女が広島を訪れたのは映画撮影のため。
原爆投下から十年、平和への祈りを込めたデモのような祭典のようなものを中核に据えたセミドキュメンタリー映画、その看護婦役だった。
「あしたの今ごろはフランスへ発つ」と彼女は言う。
ホテルを出たふたり。
彼女が言う、「わたし、ヌベールで気が狂ったことがあるの」と、ぽつりぽつりと戦時下欧州での忌まわしい記憶を語りだす。
彼が言う、「わたしの家族は広島で被爆した」・・・
というところからはじまる物語。
前半、広島の実景を中心に、映画『ひろしま』で再現された原爆投下後の広島の惨状を繋いで描いていくあたりは、ドキュメンタリー畑出身のアラン・レネらしい語り口。
その後は、女の回想を中心にして描かれるが、それは断片的で、いわゆる回想映画(回想を物語風に語る映画)というものとは異なる。
相当以前にマルグリット・デュラスのシナリオの翻訳を読んだ記憶があるが、そのときの印象では、シナリオだけではさっぱりわからないといった感じで、もうお手上げでした。
ですから、映画の方がわかりやすい。
記憶と忘却についての映画。
特に、忘却できないこと、忘却してしまうもの、その境界はあいまいかもしれず、さりとて残された記憶の強烈さは永遠に消えないともいえる。
アラン・レネは手強い。
マルグリット・デュラスも手強い。
しかし、掴めないわけではない。
40年ほど経て再鑑賞して、そう感じました。
あなたの名はヒロシマ。
きみの名はヌベール。