劇場公開日 2001年3月17日

「境界線の越え方は、解剖学者であったダ・ヴィンチのデッサンノート「解剖手稿」のように、どこか芸術的でさえある」羊たちの沈黙 えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0境界線の越え方は、解剖学者であったダ・ヴィンチのデッサンノート「解剖手稿」のように、どこか芸術的でさえある

2025年5月10日
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FBIアカデミーの優秀な訓練生クラリスは連続誘拐殺人事件の捜査スタッフに組み込まれ、犯罪者として収監されているレクター博士と面会する。それは、天才的な精神科医でありながら、自らの患者を次々と死に追いやったレクターこそ事件の謎を解く鍵になると見込んでのことだった。レクターはクラリスに興味を示し、捜査の手がかりを与える。ふたりが次第に心を通わせていく一方、新たな誘拐事件が。そしてレクターは脱獄を図り……(映画.comより)。

怪獣や猛獣などの暴力が、本能や欲望のままに制御されていない恐怖とするなら、レクター博士のそれは左脳的に完全に制御された恐怖である。彼は、殺人は大罪という普遍的な倫理からかけ離れた、全く独自の理によって思考し創作し発言し、人を殺す。その境界線の越え方は、解剖学者であったダ・ヴィンチのデッサンノート「解剖手稿」のように、どこか芸術的でさえある。

抑圧のきいた音楽と照明、映像がその恐怖をより一層際立たせる。特に、主演ふたりが対峙する場面、レクター博士は揺るぎなくクラリスを凝視するのに対して、クラリスの瞳孔は高速で微動した後、虚空を漂う。この対比的な演出は見事である。

サイコスリラーの原型ともなっている本作では、今さら言うまでもなくアンソニー・ホプキンスの映画史に残る怪演が凄まじいのだが、レクター博士役は当初、ショーン・コネリーで調整されていたそうなので、何がどう転ぶか分からない。ちなみにクラリスもミシェル・ファイファー、メグ・ライアンが候補だったとのこと(ショーン・コネリー同様、両名ともオファーを辞退)。

えすけん
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