「記者魂とは・・・」ヒズ・ガール・フライデー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
記者魂とは・・・
昨今の記者ものというと社会正義の旗手としてのシリアスものですがこんな自虐的なコメデイ映画があったとは拍子抜けというか望外の収穫でした。
ブロードウェイで大ヒットだったという戯曲「フロントページ(新聞の一面、スクープのこと)」の映画化、なんとこの原作は「犯罪都市(1931)」、「ヒズ・ガール・フライデー(1939)」、「フロント・ページ(1974)」、「スイッチング・チャンネル (1988)」と4度もリメイクされている人気作品。
原作者のベン・ヘクト とチャールズ・マッカーサーはシカゴの新聞記者出身ですから無茶苦茶な編集長ウォルターや死刑囚、市長にも実際のモデルがいて、自虐ネタも豊富、1920年代後半のシカゴを舞台に死刑囚脱走の特ダネをものにしようと奮闘する新聞記者らの姿をコミカルに描いた作品でした。本作の冒頭のクレジットでも「新聞の暗黒時代と呼ばれていた頃、記者は特ダネの為なら殺人以外はどんな手段でも使った・・」という前置き、実際ウォルターは盗み、冤罪、誘拐、偽札とマフィア顔負け、ただケーリ・グラントだからどこか憎めないのが可笑しい。
原作のヒルデンは男性記者でしたが、オーデションでたまたまホークスの秘書の女性が読んだセリフの響きに触発され、職業婦人も台頭した時代背景を読んで女性記者に脚本が書き換えられたそうです。
題名のフライデーは「ロビンソン・クルーソー」に登場する従僕と言うか相棒で金曜日にクルーソーが命を助けたことから名づけた原住民の名前で、信頼する部下やパートナーの代名詞として使われるようです。
ホークス監督はアップテンポでセリフの銃撃戦を狙ったそうで、相手のセリフ途中でセリフを被せたり畳み込む演出は本作が最初でしょう。見どころはまさにマシンガントーク、ケーリーグラントのセリフに比べて弱いと感じたヒルディ役のロザリンド・ラッセルはプライベートで脚本家を雇ってアドリブを加えたようです、ホークス監督はアドリブには寛容だったのでジャムセッションのような面白い効果が出ていますね。全編、夫婦げんかのような喧しさですが本音は似た者同士だったという落ちも微笑ましい、快作でした。