劇場公開日 1986年3月8日

「雄大なアフリカ大地の前に人間ドラマが霞み…」愛と哀しみの果て KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0雄大なアフリカ大地の前に人間ドラマが霞み…

2021年11月12日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

デンマークの女主人公は、後年、
繰り返し“農園を持っていた…”と回想するが、
彼女は、婚期を逃し年齢的な問題もあり
本国に居づらくなったために、
文無しだが男爵の称号の男性との
結婚で体裁を整えるという、
邪な思いでアフリカに向けて出立した。
ヒロインらしからぬ設定の出だしだ。

そんな彼女の、壮大なアフリカの大地と、
そこに同化したかの如くの男性
との出会いを通じた、
人間としての成長と喪失を描く、
というのがこの作品の骨子なのだろうが、
その男性や夫との絡みに
行ったり来たりのまどろっこしさに
冗長さを感じざるを得なかった。

ある意味、
3人の関係については、
通常の映画では面白味が無いとして
避ける位に
リアルに描かれているのだろうが、
いかんせん一映画作品の中での
描き方としては映画としてのリズムを
逸してしまったかの印象だ。

同じアフリカの舞台と不倫をベースとした
「イングリッシュ・ペイシェント」の
ドラマ性と比較して、
スタッフとしては丁寧に主人公の思索を
追う製作姿勢だったろうが、
現実感を醸し出し過ぎた分、
人間ドラマの部分が
平板過ぎてしまったように感じる。

しかし、この映画の最大の見所は
なんと言っても
素晴らしいアフリカの大地の映像だ。
しかし、
皮肉にも、その雄大な自然描写に
人間ドラマが霞んでしまった印象だ。

尚、今年亡くなられたジョン・バリーは
この作品でも美しいメロディを
生み出し、アカデミー作曲賞を獲得したが、
彼の印象的な映画音楽としては、
・ブラック・ホール
 (映画自体は三流だが、まるで宇宙が
  叫んでいるかのサウンドが素晴らしい)
・ジェームス・ボンドのテーマ
 (編曲のみだが、この後の007シリーズ
  には欠かせないテーマソングに
  なったのは御存知の通り)
を私は忘れられない。

KENZO一級建築士事務所