劇場公開日 1986年3月8日

「これぞ文学的映画の極みというべき作品。1900年代前半の英国の植民...」愛と哀しみの果て supersilentさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0これぞ文学的映画の極みというべき作品。1900年代前半の英国の植民...

2018年3月30日
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鑑賞方法:VOD

これぞ文学的映画の極みというべき作品。1900年代前半の英国の植民地支配や貴族階級の生活、価値観も実に興味深い。

アフリカの壮大な自然の美しさと、サバンナにおいてもテーブルサーブを可能とするほど優雅な生活は、到底両立するものではないのだが、その奇跡的な「いいとこ取り」が絵画のような映像美で繰り広げられる。ルノアールの絵画を観るように、またはゴーギャンの絵画を観るようにアフリカを観る。そんな奇跡を目の当たりにできる。

でも、その夢のような世界は、実は現地の人を奴隷のように支配することで成り立っているという事実。前述したテーブルサーブの話も、テーブルを運ぶ人間がいるからこそ可能になる。荷物を運ぶ使役人を伴いながらその一方で、彼らが存在していないかのように二人の世界に浸るその風景は、現代の映画では見られない価値観だとも言える。007といった娯楽作品ですらここまで露骨じゃない。

現代の価値観に照らしてみれば、そういう意味で居心地の悪いものを感じる人もいるかもしれない。いや、むしろ、主人公たちの住む世界の優美さにだけ目を奪われるような鈍感な人はその感覚を疑ってしまう。しかし、過去の価値観を現代の価値観で裁くことにはなんの意味もない。

一人の女性の生き方に点数をつけるのもまた違う。あの時代、あの場所で生きた一人の人間の一大叙事詩と呼ぶべき物語。その美しさに圧倒される。失った後で気づく後悔のように、過ぎた後でわかる意味のように、深い味わいがある映画だった。

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