「陰惨な話のなか、抜けるような真っ青な海と空の美しさの印象的。もう一人の主役かも知れません。」パピヨン(1973) 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
陰惨な話のなか、抜けるような真っ青な海と空の美しさの印象的。もう一人の主役かも知れません。
目黒シネマさんにてフランクリン・J・シャフナー監督、スティーブ・マックイーン×ダスティン・ホフマンの2大スター共演『パピヨン』鑑賞。
『パピヨン』(1973/フランス・アメリカ/150分)
本作品は『荒野の七人』(1960)、『大脱走』(1963)、『タワーリング・インフェルノ』(1974)など60年代~70年代のトップ俳優スティーブ・マックイーン。そして『卒業』(1967)、『真夜中のカーボーイ』(1969)、『わらの犬』(1971)でスターダムを駆け上がったダスティン・ホフマンのWキャスト。
監督は『猿の惑星』(1968)、『パットン大戦車軍団』(1970)の名匠フランクリン・J・シャフナー。音楽はジェリー・ゴールドスミス、脚本は『ローマの休日』『スパルタカス』、そしてトラウマ級の傑作『ジョニーは戦場へ行った』(1971)では原作・監督も務めたダルトン・トランボと、改めて超豪華な布陣に驚嘆。
ストーリーは実話の脱獄話。
仲間の裏切りによって終身刑を宣告され強制労働のためフランスから遠路、南米ギニアに島流しされた主人公パピヨン(演:スティーブ・マックイーン)。
彼が刑務所で知り合った偽札作りの天才囚人ドガ(演:ダスティン・ホフマン)との友情を育みつつ、彼の助力を得ながら果敢に脱走を図るがブローカーの裏切りに遇い失敗。
暗闇の独房で2年、そして2度目の脱走にも失敗してさらに5年。
暗闇のなかで半狂乱、虫を食べてまでも生きながらえ、すっかり白髪も生え老いて変わり果てボロボロの姿になっても、自由を獲得するため、3度目の脱走を企てる主人公は、『大脱走』のカッコよさとスマートさとは一転、2枚目トップ俳優がここまで全てをさらけ出し鬼気迫る演技をやるのかとのけ反るほど名演。
演技面ではマックイーン主演作ではベストアクトではないでしょうか。暗闇のなかでも妖しく輝くマックイーンの青い瞳にも魅了されます。
友人ドガのダスティン・ホフマンのパピヨンを見つめる優しい眼差しも実に良いです。
パピヨンとドガの友情譚、脱走中に仲介役の裏切りに遇いながらも、原住民、ハンセン病患者、シスターなどに助けられるハートフルなエピソードも印象深く、さすがダルトン・トランボの脚本。音楽もメリハリがあり、アクションシーンで一気に躍動させる劇伴はジェリー・ゴールドスミスの真骨頂ですね。
そして陰惨な話のなか、抜けるような真っ青な海と空の美しさは印象的。もう一人の主役かも知れません。