「自由を掴み取る!」パピヨン(1973) toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
自由を掴み取る!
実話を基にした脱獄もの。作者が最終的に自由の身になったからこそ
小説として出版できたわけだが、よくこれで生きていられたなという
過酷な体験談だ。
過剰な演出を避け、音楽は必要最小限に抑えられている。
環境音や大勢で歩く靴音、監獄に響き渡る音や銃声、あるいは
静寂など音に配慮した演出と大規模なロケーション等によって
見ているこちらまで収監されたような、主人公と体験を共にしている
ような感覚だった。本当に不味そうな食事とかも。
映画館にいることを忘れるくらい没入して観た。
物語は主人公のパピヨンとルイ・ドガの友情を中心に描かれる。
どちらも流刑地から生きて帰ることは出来ないと言われている。
そんな二人が、最初はお互いが協力し合えば有利なことが有るという
利害関係からつるむようになったのだが、しだいに友情が芽生える。
無実の罪を着せられたパピヨンと偽造の天才ルイ・ドガ。
背景や個性は全く違っても「こんな場所でみじめに死にたくない」
という気持ちは一緒。お互いに窮地を救いあい絆を深める。
スティーブ・マックィーンとダスティン・ホフマンの共演。
二人の演技が素晴らしい。
長い年月にわたる物語だが、その間の老け具合とか、パピヨンが
独房に長く閉じ込められてやつれていく様とか、メイクの助けも
あったにせよ歩き方とか体全体で表現していて現実味があった。
そして肉体的にどれだけ痛めつけられても精神の奥底にある何かが
パピヨンを支えている、そういうところもきちんと描かれていた。
どんなに過酷な状況にあっても諦めない不屈の精神を持った
パピヨンだからこそ生き延びて、最後は自由を手にするという
過程に説得力があった。
最後は二人一緒に逃げるのか、あるいは?それぞれが下した
結論には必然性があると思った。ラストシーンも良かった。