劇場公開日 1991年5月25日

「溶けたジャングルジムにどんどん近づいてくる集団が怖い」八月の狂詩曲(ラプソディー) 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0溶けたジャングルジムにどんどん近づいてくる集団が怖い

2024年8月18日
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鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

寝られる

監督と脚本は『醉いどれ天使』『野良犬』『羅生門』『生きる(1952)』『七人の侍』『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』『赤ひげ』『影武者』『乱』の黒澤明

20代前半のときTSUTAYAで借りて鑑賞して以来四半世紀以上経つがそれ以来2度目の鑑賞

長崎を舞台とした反核映画
長崎の片田舎に住む老婆の鉦に孫たちが夏休みを利用し泊まりに来た
ハワイに住む鉦の甥が鉦に会いに来日した

いくら優れた演出家でも脚本がダメでは話にならない
黒沢映画の多くは黒澤明1人で脚本を書いているわけではない
黒澤1人だとこうなるのか

柳葉敏郎主演TVドラマ『ホットドッグ』の4人きょうだいの長男として主演していた伊崎くんと田村正和主演『パパはニュースキャスター』の愛(めぐみ)3人衆の1人を演じた鈴木美恵が懐かしい

欧米的価値観に反旗を翻しハリウッドスターのリチャード・ギアに謝罪させるシーンは高く評価したいが・・・

この作品の1番の見どころは超大物助っ人外国人俳優リチャード・ギアではない
マグリットの絵にありそうなキノコ雲と巨大な目の取り合わせでもない
ましてや原爆の熱線でぐにゃりと曲がったジャングルジムでもない
強風吹き荒れる悪天候の中を傘を差して外出し野薔薇の日本語少女合唱が流れる中やっぱり傘が裏返しになるもそれでも負けるもんかと突き進む老婆
それを必死に走って追いかける孫4人
信次郎は派手にこけてる
なんかこのシーン高級なコント?
タイトルは忘れたが漫画か他の映画作品で見たような光景
このシーンのパロディかな
反核反戦映画なのに最後の最後で大笑いしてしまった

椿三十郎が100点ならこっちはせいぜい20点がいいところ

あと吉岡秀隆が演じた縦男って名前変わってるね
原作も縦男

ちなみに原作は原爆絡みの話は全くないらしい
原作者も映画の出来に相当の不満があったと聞く

いくらテーマが良くてもそれだけで映画作品を賞賛する思想は持ち合わせていない
映画の出来としてかなり不味い
漫画のはだしのゲンが傑作ならこっちは明らかに駄作だ

配役
忠雄と良江の母の鉦に村瀬幸子
良江の息子の縦男に吉岡秀隆
忠雄の娘のたみに大寶智子
良江の娘のみな子に鈴木美恵
忠雄の息子の信次郎に伊崎充則
鉦の息子の忠雄に井川比佐志
鉦の娘の良江に根岸季衣
良江の夫の登に河原崎長一郎
忠雄の妻の町子に茅島成美
鉦の甥のクラークにリチャード・ギア

野川新栄