「プーチンが心配する復員兵によるロシア国内の混乱への想像も…」野良犬 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
プーチンが心配する復員兵によるロシア国内の混乱への想像も…
多分、今は無き銀座並木座で
初めての観た記憶の作品だが、
TV放映を機に何十年ぶりかで鑑賞した。
キネマ旬報ベストテンでは、小津・今井正
作品に次ぐ第3位に選出。
さて、この作品、
よしず越しに太陽が覗くシーンは、
後の「羅生門」の描写への発展過程の映像と
思われて興味深かかったものの、
正直なところ、前半は主人公が復員兵姿で
ピストル屋を探して街を歩き回るシーンを
中心に少し冗長さを感じた。
しかし、後半は、特に、
雷雨とレコードの音を重ねることにより、
電話が行き違いになるシーン以降の
緊迫感溢れる黒澤映像には大変魅了された。
ところで、盛り場や闇市のシーンは
セットかも知れないが、
一方、全く車の通らない未舗装の幅広い道路
の郊外の住宅街等々、
戦後間もない日本の風景には目を見張り、
映画も社会の記録媒体の一翼
であるかのようにも。
面白かったのは、社会の問題として
犯罪者に理解を示すのが新人刑事で、
多数の犠牲者を生む犯罪者は捕まえなくては
ならないと割り切るベテラン刑事という、
刑事の世界だからか、
キャリア差で生じる意識としては
普通とは逆のように感じる設定の印象も。
この作品は、復員兵により混乱する
社会的側面にも触れているように思えたが、
現在のウクライナ侵攻に伴う復員兵による
社会混乱をプーチン大統領は心配している
との報道もあり、
そんな想像も膨らむ鑑賞となった。
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