「新米刑事の成長物語」野良犬 ケイさんの映画レビュー(感想・評価)
新米刑事の成長物語
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黒澤映画は当時の人々、その暮らしを映し、息遣いや、臭い、暑さまで伝わってくる。三船敏郎演じる新米刑事が拳銃を盗まれたことから、殺人事件が起き、ベテラン刑事演じる志村喬と共に犯人を地道な捜査で追い詰めていく。三船敏郎はその責任感から、とにかく猪突猛進、熱く真っ直ぐ、志村喬は先輩刑事としてそれを温かく諭す。このコンビが良い。犯人・遊佐を追う過程で出会う一癖二癖ある人物たちも情が伝わると言うか、根っからの悪い奴という感じではない昭和さがある。志村喬が遊佐の泊まるホテルを突き止め、三船に電話するシーンは緊張感あり、この映画一番のシーンだと思う。三船が淡路に、世の中が悪いと言って責任転嫁し、悪いことをする奴が一番悪い奴というシーンと、ラスト、三船はまだ新米だから、犯人の気持ちを考えてしまうが、そんな犯人の気持ちより、善良な市民を守ることが大事、いちいち考えていられないし、捕まえた犯人のことなど忘れると諭す志村のシーンは良かった。生きるためには立ち止まっていられないという監督のメッセージに感じる。
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