野良犬のレビュー・感想・評価
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多少の難は感じられるが大好きな映画
戦後すぐの日本の姿。 やけに暑く埃っぽく 無念と情熱が入り混じる。 戦後すぐの映画ということもあり 今と比べ見難いところもあるが 制作の熱意が随所に見られる秀作。 難は野球場の長いシーンでしょうか プレイの殆どはカットでもいい。 難を超える描き方がある 映画は、物語は、希望的未来では無く、 リアルタイムの、心情、風景、世論など、 その描き方がストレートに伝わってくる。 混乱した日本の姿 未来はこの後に続く。 ※
天国と地獄より上の作品
天国と地獄はドラッガーの溜まり場の表現と
丘の上のアジトに新一と刑事が同時に
辿り着くシナリオに詰めの甘さが残る
その点「野良犬」では指摘できる弱点が
見当たらない非常に完成度の高い作品
特にエキストラの使い方は素晴らしい!
暑い、厳しい現実をどう生きるか
とにかく暑そう。汗を拭うシーンがとても多い。
その中で最後、犯人と対峙するシーンだけ美しいお花畑になり。
まるで夢の世界の様になります。
それは同じ復員兵の村上刑事と犯人の対比ですね。復員の際バッグを盗まれたことのある2人。
でも立場が全然違う。それはどう生きるかの選択が真逆だったから。世の中を恨むか、そのなかでまじめに生きていくのか。
最後の犯人の慟哭が切なかった。
その日は恐ろしく暑かった‼️
あるインタビューで黒澤明監督は「オープニングが秀逸な映画はダメなんだ」と語っておられました。ところがこの発言は矛盾してます。なぜなら最高のオープニングを持つ最高の刑事映画を作っておられるのですから。「その日は恐ろしく暑かった。」のナレーションから、暑さに喘ぐ犬のドアップの顔のタイトルバック、「何?ピストルを擦られた」、射撃練習、三船さん扮する村上刑事がスリを追う追っかけ(「フレンチコネクション」で模倣されてます)。これは野村芳太郎監督の「張込み」と並ぶ素晴らしいオープニングシーンで、それ以降も戦後の東京の風景や、野球場での捕り物、志村喬さんが撃たれるシーン、ラストの犯人逮捕まで、現代まで通ずる刑事映画の教科書を作り上げた黒澤明監督に拍手‼️
新人刑事×年長刑事のバディ物の元祖
黒澤明×三船敏郎×志村喬の渋い傑作。音楽の使い方が不思議。サスペンスとしても良作だが、戦後の闇市の様子などリアルな社会情勢を見ることができるのも印象的。志村喬好きとしても、彼のチャーミングさと人間臭さが堪能できる作品でした。
盗まれたコルト
しつこくお銀を追いまわして、ようやく話を聞きだすが、闇のピストル屋を探すこととなる。復員兵の格好をして、歩き続け、ようやく白い花を頭に飾った女を捕まえるが、末端の売人。強盗事件を担当していた老練の佐藤刑事(志村)とタッグを組んで捜査する村上(三船)。やがて野球が大好きな本多という男にたどり着く。 ジャイアンツの試合、青田や川上が出ているし、かなり貴重。それだけじゃなく、戦後混乱期の東京の姿もリアルに映し出されるし、給料の話だとか、配給だとか、刑事も含めた庶民の生活が描かれている。しかも作られたのが1949年。当時としてもかなりの先端をいってたんだろうなぁ。 村上も復員兵。遊佐(木村功)も復員兵で、共に全財産の入ったリュックを盗まれ、一方は刑事、もう一方は悪人となってしまう。悪が悪を生むだけじゃなく、善にも変わり得る可能性を描いているところがいい。 ラインダンサーの並木ハルミ(淡路)。殺人犯遊佐に絡んだドラマよりも、ダンサーとしての彼女がいい。暑さもあれど、ダンスが終わると一斉に楽屋にかけこむ踊り子たちの汗・汗・汗!艶っぽいけど、生活臭まで漂わせる。 ラストの三船・木村の対峙シーン。現代の刑事ドラマからすると、あっけないのだが、上流階級家庭からピアノの響きが聞こえるところが、この頃から格差社会が生まれていたんだと印象付けられるところだ・・・その後、2人が倒れこんでいるところへ童謡「ちょうちょ」が聴こえてくるけど、遊佐の想いは「この平和な時代に生まれてきたら・・・」などと思ったのだろうか、慟哭が妙に悲しい・・・
新米刑事の成長物語
黒澤映画は当時の人々、その暮らしを映し、息遣いや、臭い、暑さまで伝わってくる。三船敏郎演じる新米刑事が拳銃を盗まれたことから、殺人事件が起き、ベテラン刑事演じる志村喬と共に犯人を地道な捜査で追い詰めていく。三船敏郎はその責任感から、とにかく猪突猛進、熱く真っ直ぐ、志村喬は先輩刑事としてそれを温かく諭す。このコンビが良い。犯人・遊佐を追う過程で出会う一癖二癖ある人物たちも情が伝わると言うか、根っからの悪い奴という感じではない昭和さがある。志村喬が遊佐の泊まるホテルを突き止め、三船に電話するシーンは緊張感あり、この映画一番のシーンだと思う。三船が淡路に、世の中が悪いと言って責任転嫁し、悪いことをする奴が一番悪い奴というシーンと、ラスト、三船はまだ新米だから、犯人の気持ちを考えてしまうが、そんな犯人の気持ちより、善良な市民を守ることが大事、いちいち考えていられないし、捕まえた犯人のことなど忘れると諭す志村のシーンは良かった。生きるためには立ち止まっていられないという監督のメッセージに感じる。
徹頭徹尾、対比を意識している。更に捜査と市井の風俗をねちっこく絡め...
徹頭徹尾、対比を意識している。更に捜査と市井の風俗をねちっこく絡めるのはメッセージが強くあるからだろう。踊り子が回るシーンも美しく、雨の不吉の忍び寄らせ方も見事。
現在のサスペンス映画・ドラマの基盤
黒澤明の「初めて」の本格的サスペンス…? いや、もう「完璧」としか言えない。 主人公の性格や捜査の内に成長していく過程、相棒の大先輩、仲間の刑事、キーパーソンである女性たち…と登場人物も魅力的な人しかいない。 戦後の貧困を訴えている場面は、現在でも通じるようだと感じた。 どん底からアウトローの道に行くか、地道にまともな道を行くか、考えさせられる内容だった。 志村喬さんは、やっぱり魅力的!!
21世紀の現代に於いてもなお、本作は私達にどう生きるべきかメッセージを発しているのです
恐るべき傑作です 刑事サスペンスとして高いレベルで成立していながら、本当の主題を見事に謳いあげているのです その二重構造には舌を巻きます 1949年の作品です 同じ敗戦国のイタリアではヴィットリオ・デ・シーカ監督のネオリアリズモの名作「自転車泥棒」が前年に公開されたばかりです 敗戦国の庶民の有り様を活写しているのは、両方の作品とも同じですが、本作はそれを悲哀の絶望の物語ではなく、刑事ものの娯楽映画として成立させつつ、戦後の精神の在り方についてどう生きるべきかを観客である国民へのエールを送っているのです つまりそれこそが本作の主題なのです 殺人事件まで引き起こしたコルト拳銃を摺られた失態は、実は敗戦の暗喩なのです そしてアプレゲールの長めのやり取りは何の為のシーンなのか そこに本作の黒澤監督のメッセージがあるのです アプレゲールとは、戦後の混乱の中で無軌道に生きる若者達のことです そのように生きるのは世の中が悪いからだと並木ハルミも本多もそういうのです アプレゲールの反対語はアバンゲール 本作の中ではアプレゲールは愚連隊、つまり今でいう半グレ的な意味合いで使われています 半グレのグレも愚連隊が言葉の起こりです アプレゲール談義のすぐあとに佐藤警部は隣室の蚊帳の中に川の字に眠る子供達を見せます 子供達の無心に眠る姿こそ平和な平常の日本人の暮らしです つまり佐藤警部こそがアバンゲールの象徴なのです ここで監督は見事な対置を見せるのです 主人公の村上刑事はコルトを無くし、それによって殺人事件まで起こったことでノイローゼになりそうになっています 不運は人間は人間を叩き上げるか、押し潰すかだ、君は押し潰される気か 心の持ち方次第で君の不運は君のチャンスだ そう上司の係長は村上を叱るのです そして逮捕シーンでもまた逮捕された犯人と村上刑事は画面の左右に対置され天を仰ぐのです 一方は押し潰された者、一方は傷を負いつつもそれを乗り越え叩き上げられてより強くなった者なのです 犯人と村上は同じように元復員兵で年齢も大差ありません 復員してリュックを列車の中で盗られてしまうところまでは同じなのです その不運を世の中が悪いとグレるのか、村上のようにそうならないのか 彼は並木ハルミにこう言います 世の中も悪い、しかし何もかも世の中のせいにして悪いことをする奴はもっと悪いと そして何故そのドレスを着ないのだと そうなじる村上に反発して彼女はそのドレスで舞い楽しいと心にも無い言葉を発するのですがアバンゲールたる母親から正気に引き戻されるのです そのドレスの裾を翻して回転するダンスのシーン その象徴的なシーンを撮る為に彼女はダンサーという設定にされたのだと思います 犯人と村上の二人が倒れている周囲には花が生い茂っています 舞台は夏 、犯人の配給手帳の発行日は昭和23年のものですから、恐らく製作年の1949年の真夏から初秋です ですから花は秋の花コスモスのように見えます そこに幼い子供達が春の歌を唱いながら歩いて来るのが聞こえます 何故に秋なのに春の歌を監督は歌わせるのでしょう? あの子供達は戦後の日本は辛い冬が終わって春が来たと観客に向かって歌っているのです 本作は刑事ものサスペンスの体裁を取りながら、実は黒澤監督からの戦後の国民への強く生きろとのメッセージだったのです 題名の野良犬とは、本編にあるよるようにチンピラのような野良犬が殺人犯たる狂犬にかわることを意味すると同時に、戦後日本の混乱の中で暮らしている日本国民を野良犬だと言っているのです 狂犬になる果てることなく早く正気になれ、強く生きろと言う意味だったのです 舞台は暑い夏に始まります 何故に酷暑の夏なのか、単に撮影時期が夏だから?そうかも知れません しかし敗戦の暑い夏を想起させる為の設定なのではないでしょうか 逮捕シーンで猛暑は過ぎ去り初秋の花の咲く野原で犯人は咽び泣くのです 敗戦の悲しみを何時までも引きずっているのではないとのメッセージだと思います そしてラストシーン 佐藤警部は犯人のことを何時までも気に病む村上に諭すのです そんな感傷なんかなくなるよと そしてこう言うのです その腕が治ったらまた忙しくなる 犯人のことなんか自然に忘れるよと そう、犯人とは戦争の事なのです これが本作の主題であり黒澤監督の戦後復興にむけたメッセージなのです だから前半に戦後の混乱の中にある東京の実相をあのように長く撮影して見せているのです そして21世紀の今 単に昔の傑作だと感嘆するのみの作品でしょうか? バブルが崩壊し恐慌寸前まで行ってから20年は経過しました 今もその傷は癒えず失われた20年とも30年とも言われています アプレゲールの人々は街に溢れています 21世紀の現代に於いてもなお、本作は私達にどう生きるべきかメッセージを発しているのです 三船敏郎、志村喬の黒澤映画の二大エンジンが演じるドラマは目が釘付けです 黒澤監督の撮影、演出も何もかもが素晴らしいものです 取り調べ室でのお銀の背中と佐藤警部の表情を捉えたパンフォーカスのショットは見事です 狂犬は一直線との台詞に続く線路の真っ直ぐに伸びるシーンなぞは小手先ぐらいの技です 球場前での容疑者探しの数万の観客で埋まるシーンを見せる、広い東京での捜査の困難さの説明も序の口です 本多を階段に追い詰めるシーンは印象に残るものです 後のキューブリック作品の現金に体を張れを思い出させるような陰影を感じました 本作の方が7年も先にこのような映像を撮っているのです 犯人の顔を逮捕寸前まで見せない演出もサスペンスが盛り上がり効果的でした 独りよがりにメッセージを発するものではなく、娯楽作品としても見事に高いレベルで成立させて見せているのです 黒澤監督作品の凄さに今さらながら圧倒される思いです
本当にすごい。
若い頃、一回だけ見てすごいと思った映画を最近見直したりしている。今見ると色あせて、風化してしまっている作品が多いが・・・これは凄い。本当にすごい映画だと思った。黒澤明すでに完成している。
とくに逮捕された犯人が泣き出すところがすごい。その構図。その泣き出した犯人を見て驚く三船の表情がまたすごい。そこのところのショットがすごい。ショットは全体的にすごい。ピストルを構えた犯人と三船が対峙するショットもすごい。黒澤のショットは芸術的かつ通俗的だ。映画監督を目指す人はこの映画を10回は見てショットやカメラワークの研究をすることをおすすめする。
ジリジリした暑さとスリル
DVDで鑑賞。
三船敏郎と志村喬演じるふたりの刑事のコンビぶりが秀逸の極み。若手を導くベテランと云う構図がナイスでした。徐々に相棒感が増していく展開も堪りませんでした。
だからこそ、佐藤刑事の撃たれるシーンがかなり衝撃的でした。撃たれる様子は映されないのに、悲痛を溢れさせる演出が見事。村上刑事の絶叫がさらに際立たせていました。
うだるような暑さの中、滴る汗を掌で拭いながら事件を追うふたりの刑事。太陽の熱気が届いて来るようで、こっちまで汗を掻きそうになるほどの迫真のリアリティーでした。
闇市でゲリラ撮影されたシーンは、戦後間も無い当時を記録する貴重な資料だな、と…。混乱とカオスが伝わって来ました。魑魅魍魎が蠢いているような怖さも感じました。
ダイナミズムと躍動感溢れるカメラワーク、緊迫した場面に敢えて穏やかな劇伴を流すと云う手法を用いて、とても見応えのあるシーンが作り出されているなと思いました。
[以降の鑑賞記録]
2014/03/22:DVD
※修正(2023/06/01)
貴重な歴史的資料&黒澤センス溢れる良作
当時の闇市を隠し撮りしたという荒技により 映画では再現出来ない生の当時の人々の生活 風俗が見事に映し出されており、これだけでも 一見の価値ありです。 村上刑事が街中を歩き回るシーンは 人々の服装や表情、動き、お店の看板など 見ているだけでも飽きません。 まだまだ戦後の混沌としたエネルギーの 満ち満ちた世界で、女性が歩きながら 果物をかじったり、アイスキャンデーを舐める姿は 清々しくもエロスに溢れています。 また実際の巨人対南海(ジャイアンツ対ホークス) 戦での川上選手らの姿も貴重。 ベテラン勢の芸達者ぶりと三船敏郎の若さ溢れた 勢いと繊細かつ大胆な演技プランが絶妙。 若手の女優は今ひとつの所はありますが、 当時の女性の今と全く違うスタイルに 戦後の日本がいかに急成長を遂げたか、 食生活の変化が体型までも大きく変えた 事がよく分かります。
とてもよかった
舞台は浅草が多かったのだろうか、当時の繁華街がエネルギッシュでよかった。球場もよかった。5万人もの観衆が集まっていた。まだ戦後の爪痕が生々しい時期が写っている。以前に見たときは闇市の印象があったのだが、特に闇市はなく、喫茶店や劇場など復興の勢いがみなぎる場所が多かった。そんな情景がだらだら描かれているところが楽しかった。
犯人の桶屋の家、凄まじい荒れようで壁がない。そんな家に子沢山。それに比べて志村喬の家はちゃんとしてて子供が三人並んで寝ていて幸せそうだった。彼は警官だからおそらく戦争にも行ってないのだろう。そんなところに引け目があるのかなと思ったが気にしている描写はなかった。
ホテル、電話、高円寺のアパート、雨、ドレス、階段、犯人、ホテルの経営者と従業員の愛人、などが目まぐるしく交錯するクライマックスがスリリングで素晴らしい。
ダラダラ感
内容にメリハリが無くダラダラと進んでいるように感じた。作品にも入り込むことが出来ず、途中は子守唄に感じてzzz…。残念ながらこの作品の良さを感じる事は出来なかった。 (午前十時の映画祭にて鑑賞) 2017-127
ちょっと中途半端な感じ…
こういう硬派な(?)刑事ドラマは正直野村芳太郎監督の『砂の器』ぐらいしか見たことがない。正直あれ程は響かなかった。他の作品ほどメッセージ性はなく、純粋に刑事ドラマがやりたかったのかななどと思った(僕が汲み取れていないのか)。でも娯楽作品として楽しむにはちょっと重々しくてお薦めはできない…。ぶっちゃけ中途半端な印象です。でも黒澤監督の守備範囲の広さには驚かされる。
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