劇場公開日 1949年10月17日

「盗まれたコルト」野良犬 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0盗まれたコルト

2021年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 しつこくお銀を追いまわして、ようやく話を聞きだすが、闇のピストル屋を探すこととなる。復員兵の格好をして、歩き続け、ようやく白い花を頭に飾った女を捕まえるが、末端の売人。強盗事件を担当していた老練の佐藤刑事(志村)とタッグを組んで捜査する村上(三船)。やがて野球が大好きな本多という男にたどり着く。

 ジャイアンツの試合、青田や川上が出ているし、かなり貴重。それだけじゃなく、戦後混乱期の東京の姿もリアルに映し出されるし、給料の話だとか、配給だとか、刑事も含めた庶民の生活が描かれている。しかも作られたのが1949年。当時としてもかなりの先端をいってたんだろうなぁ。

 村上も復員兵。遊佐(木村功)も復員兵で、共に全財産の入ったリュックを盗まれ、一方は刑事、もう一方は悪人となってしまう。悪が悪を生むだけじゃなく、善にも変わり得る可能性を描いているところがいい。

 ラインダンサーの並木ハルミ(淡路)。殺人犯遊佐に絡んだドラマよりも、ダンサーとしての彼女がいい。暑さもあれど、ダンスが終わると一斉に楽屋にかけこむ踊り子たちの汗・汗・汗!艶っぽいけど、生活臭まで漂わせる。

 ラストの三船・木村の対峙シーン。現代の刑事ドラマからすると、あっけないのだが、上流階級家庭からピアノの響きが聞こえるところが、この頃から格差社会が生まれていたんだと印象付けられるところだ・・・その後、2人が倒れこんでいるところへ童謡「ちょうちょ」が聴こえてくるけど、遊佐の想いは「この平和な時代に生まれてきたら・・・」などと思ったのだろうか、慟哭が妙に悲しい・・・

kossy