「【王女と兵士】」ニュー・シネマ・パラダイス ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【王女と兵士】
昔は、僕の田舎のそれぞれの街に、映画館が一つや二つあった気がする。
今でも、県庁所在地や少し大きめの街には映画館はある。
でも、小さな街の映画館は、郊外のショッピングモールに併設されたシネコンに取って代わられ、閉鎖、取り壊された。
僕の85歳を超えた母親は、ジェームズ・ディーンがお気に入りで、「ジャイアンツ」が好きだ。
ジャイアンツで、ジェームズ・ディーンは主役ではない。
なぜ、「エデンの東」や「理由なき反抗」じゃないのかと聞くと、巨万の富を築きながら、愛を手に入れることが出来ないジェット(ジェームズ・ディーン)にどこか感情が揺さぶられるらしい。(単にカッコいいから好きで、感情が揺さぶられるだけだと僕は思っていますけどね😁)
そして、その後間もなく、ジェームズ・ディーンは交通事故で亡くなるが、それも、この作品を印象付けているように感じるというようなことを言っていた。
こんな悲劇のストーリーで、僕の母親のカタルシスは刺激されていたのだ。
たぶん、多くに人に、感情を揺さぶられたり、胸躍った映画がひとつやふたつは、あるに違いない。
この映画は、そんな人々に向けた作品なのだ。
「ニュー・シネマ・パラダイス」のなかで、アルフレードが、青年になったトトに話す「王女と兵士」の物語。
なぜ、100日目を前に兵士はバルコニーの下から立ち去ったのか。
人によって答えは様々なように思う。
立ち去る理由は人それぞれなのだ。
映画館が無くなっても、映画と共に過ごした日々は無くなりはしない。
記憶が薄れない限り、映画の物語も心の中に残る。
だが、日々を無為に過ごさず、サミュエル・ウルマンの「青春の詩」のようにつねに瑞々しい気持ちでチャレンジすることはもっと大切で、きっと映画の物語も、何か手助けしてくれるに違いない。
「お前の声を聞くより、お前の噂を聞く方が良い」
そうやって人の足を引っ張らず、人の背中を押し合えるような世の中であれば良いと思う。
そして、安易に答えを求めず、考え続けることも大切だ。
王女と兵士の物語をふと考えるように。
エンディングのフィルムから切り取られたキスシーンの数々。
静かなもの、情熱的なもの、笑顔のもの、抑えきれない感情など、全てのキスシーンの背景には異なる物語があるのだ。
僕達、ひとりひとりにも違う物語が隠されているように。
この物語は、映画を愛する全ての人に向けたメッセージなのだと思う。
あの優しく流れる音楽を作ったエンニオ・モリコーネが7月に亡くなった。
早くコロナが終息して、まあ、イタリア人だけに限ったことではないが、世界中の人が、前のように気軽にハグしたり、キスしたりできる世界が戻ってくればいいと心から思う。