劇場公開日 1989年12月16日

「矛盾した構図とテクニシャンの処女」ニュー・シネマ・パラダイス ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0矛盾した構図とテクニシャンの処女

2019年9月1日
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村上龍の料理小説「ウェルク」じゃないけど、愛に溺れる者は人々に愛を見せる者になることはできない。
つまり映画を作りたかったら、映画への愛に溺れてはいけない。

主人公は郷愁を禁じられながら、作品自体が掻き立てるものは紛れもなく古きよき時代への郷愁、という巨大な矛盾が提示されます。
トトはいちおう主人公らしく描かれていますが、それにしては故郷のパートが極端に長すぎる。
同じ帰郷ものである「ヤング≒アダルト」なんかと比べれば一目瞭然です。普通は何十年後に帰る、そこで起こることがメインになるはず。
とすれば真の主役は表題に象徴される映画館と名もなき観客たち、彼らが映画とともに生きていた時代そのもの、というこのなのかも…

一見するとクラシカルな匂いが強烈ですが、構造としてはメッチャ現代的なんですよね。
おそらく当人もものすごい映画好きなんだろうな、と思わせる作り手の映像技術が炸裂してて、ものすごいテクニカルな作品だと思います。
その点でタランティーノにも通じるものを感じる。
なのにそれを感じさせずに映画好きのみなさんにグズグズに愛されているあたり、すごいなあ。テクニシャンの処女ってこういうことを言うのかしら。。

でもいくら名曲だからって、テーマ曲はいくらなんでも多用しすぎ、本家がすでにコント化してませんか? っていう。
それすらも狙いだとしたら…((((;゚Д゚)))))))

それはともかく、アルフレードも相手がトトだからこそ、理想的なメンターとしての姿勢を貫けたんだろうな、という師弟関係はまちがいなく感動的で、そこが一番好きなところでした。

ipxqi
あらんどろんさんのコメント
2019年11月24日

仰る通りだと思います。この映画の主人公はやはりあの映画館であり、それを愛した人々でしょう。この映画を観ていると、幼い頃住んでいた町とそっくりです。この映画に出てくるような、頭のおかしい人もいました。イタリヤも日本も驚くほど似ていると感心しました。ほんとに良い映画です。

あらんどろん