劇場公開日 2018年10月19日

「個人的な感想です」2001年宇宙の旅 AKIRAさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0個人的な感想です

2024年7月10日
PCから投稿

難解なこの映画。後に、答えを求め読んだアーサークラークの原作には、ある程度のメッセージが込められたラストが描かれていましたので書かせていただきました。

モーセが神から受け取った2枚の石板を表しているかのような(これは個人の感想です)、2枚の石板モノリスによって導かれるように落ちてゆくボーマン船長。

彼はさまざまな宇宙をめぐり、再び目覚めた時、「スターチャイルド=地球を意のままにできる汚れなき存在」として地球を見下ろしています。(余談ですが、最初のヒトザルには「ムーンウォッチャー=月を見る者」という名前がついています。)

原作の最後の一節には、
「(彼は)手遅れになる前に戻ったのだ…今や、地球は彼の意のままだが(彼はまず地球の軌道上に浮かぶ兵器を、意思を送り出すことで破壊します。)…そして人間たちが考えるような歴史は終わりを告げるのだ…」とあります。

最後の一節は、何を意味するものなのでしょうか。

勝手ながら私には、もう一冊この映画に関して取り上げたい本があります。それは、ニーチェの「ツァラトゥストラ(ゾロアスター)はかく語りき」という本です。

この映画には2つのクラシック音楽が使われています。冒頭のシーンで流れる「ツァラトゥストラはかく語りき」と後半の「美しく青きドナウ」です。

「ツァラトゥストラはかく語りき」という曲は、この本からインスピレーションを受けて作られた曲です。キューブリックがこの曲を使ったのも、ただ単に曲が映像と合っていたというだけでなく、私には何かメッセージがあると感じられるのです。

この本にはこんなことが書かれています。

『かつて貴方がたは猿であった。だが、今もなお人間は、いかなる猿よりも猿である…』

『わたしはあなたがたに超人(人を超える存在)を教えよう。超人は大地の意義なのだ。わたしはあなたがたに切望する。大地(あるがままの自然)に忠実であれ、そして大地を超えた希望などを説く者に信用を置くな…』

『いまや人間みずから目標を定める時がきた。人間がその希望の芽を植え付けるべき時が来た。いまの土壌はまだ十分豊かである。しかしこの土壌もいつかそのうち貧しく瘠せるであろう。そして高い木はもはやそこから成長することはできなくなるであろう…』と。(後半、石板の記述もちょっとですが出てきます。)

「自然が一番上にあり、汚してはいけないもの」と考えると、人間はどんな生き物よりも下の階層にいるのかもしれません。(人間が考える価値観は、全く逆なのかもしれません)

現代の映画を見慣れた方なら「CGを駆使すれば、難なく出来る映像だ」と思われるかもしれません。ですがこの作品は、アポロ11号の月面着陸以前の作品であり、日本でもまだそう少なくない人が白黒テレビを見ていた時代の作品です。そしてこの作品をみれば、10年程もあとの「STAR WARS」以降のSF映画にも多大な影響を与えたことがわかると思います。

「美しく青きドナウ」の表現する地球の青さ、美しさ。それがよく見てみると、人間の欲望やエゴにより汚されていく現状。膨大な量の有害物質を排出し宇宙に飛んだ宇宙飛行士の「地球は青かった」発言。

人類(とりわけ子供たち)の「夢」に見せかけておいて、その奥にある宇宙技術軍事転用の茶番。それによって実現した核の直接攻撃の脅し。地球が滅亡した時のための火星や月への移住計画(我々はこの地球でしか生きられないのに、この地球が本来、楽園なのに)。そして今も繰り返される支配と殺戮。

冷戦時代、それを感じたキューブリックは、モーセが神から十戒を記した2枚の石板を受け取った時と同じように、現代の十戒を、私たちに映像を通して残したのではと思うのです。

そして人類は、いつの日か滅亡するその時までに、猿を超えることができるのでしょうか...

個人的な視点で長々すみません。読んでいただきありがとうございました。

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AKIRA