「アナログの野生、デジタルの洗練」2001年宇宙の旅 nagiさんの映画レビュー(感想・評価)
アナログの野生、デジタルの洗練
言わずと知れた傑作だが、劇場での鑑賞経験は無かった。しかし、先日機会に恵まれ、国立映画アーカイブにて70mmフィルム、そしてIMAXも鑑賞することができたのでその感想を記す。
70mmには、ノスタルジアが正しい評価の支障になるかと思ったが、杞憂であった。やはり70mmにはデジタルには無い魅力がある。
1つ目は、THE DAWN OF MANにおける風景の美しさである。これはいきなり度肝を抜かれたのだが、なんと言えば良いのか、所謂「淡さ」なのだろうか、まるでモネの絵画の光の描写のような空気感、景色の奥行きを感じたのである。これはIMAXデジタルでは感じることが出来なかった印象である。つまり、デジタルの洗練に対するアナログの「野生」を感じ取れるのだ。
2つ目は、HAL9000の狂気である。これはIMAXの大画面で観ても流石に抱く感情だが、HALが持ってはいけない「意志」を持つことの恐怖、コンピュータが人間の支配を脱した瞬間、この狂気は70mmの野生的な映像を通すと鳥肌が立つほどのものだ。表情の読み取れぬ真紅に灯るランプ、それがアナログのフィルムに揺れる。
公開50周年の節目にこの鑑賞機会に恵まれた事は、幸福な事だと感じている。
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