夏の嵐のレビュー・感想・評価
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公開当時の日本では政治の「夏の嵐」が吹き荒れていたそうです
ヴィスコンティ監督作品の中では、退屈せずに面白く鑑賞できる作品
映像も美しくセットの美術も衣装も絢爛豪華で目が楽しいことこの上ない
終盤の戦争シーンも迫真性が半端ありません
しかもカラー
画面は明るく鮮明、彩度も高い、レンズの味が映画を観たという満足感をもたらしてくれます
1954年製作、翌1955年の日本公開作品
当時日本ではほとんど評価されなかったという
1955年は日本共産党が武装闘争方針の放棄を決定した年であり、新左翼誕生の原点の年でもありました
つまり政治の夏の嵐が熱く吹き荒れていたのです
ですから、本作のようなブルジョア貴族階級の惚れたはれたの不倫物語など観たくもないという時代であっただと思います
舞台はイタリアで伊墺戦争を背景にした題材
そうと言われても日本人には馴染みがありません
冒頭に1866年とテロップがでます
つまり日本で言えば幕末
主人公のリヴィア伯爵夫人を徳川方の大きな藩の奥方様、ロベルト侯爵は新撰組の隊長、オーストリア軍は長州の倒幕軍、フランツは長州藩士、舞台は京都
序盤のフェニーチェ劇場は、京都四条河原町の南座
オペラは歌舞伎
そんな具合に置き換えてみると、するする筋書きが頭にはいります
お話は西鶴一代女みたいなものです
詰まらぬ男の手管にのせられて、気がつけば色恋に溺れて、身分を忘れて転落してゆく女の物語
洋の東西を問わず同じです
本作を観て「面白かった!良かった!」なんていうと、公開当時の日本ではブルジョア趣味だ!自己批判しろとなじられたのでしょうか?
良い世の中になったと思います
「夏の嵐」
身体の芯の熱いものが理性を吹き飛ばしてしまう
そんな映画を素直に評価できる幸せな世の中です
原題は「官能」
それを「夏の嵐」とつけた日本の配給会社の宣伝マンのセンスはさすがです
不倫のお話
2021年11月7日
映画 #夏の嵐 (1954年)イタリア映画
鑑賞
古い女性像を描いた作品なんだろうなと思った。
金持ち夫の庇護下にありながら、理想に燃えて反乱闘争に奔走する従兄弟に恋焦がれ、しかし、その従兄弟を流刑したイケメン将校に恋をし、溺れる。
#ルキノ・ヴィスコンティ 監督作品らしい作品
女たらしの軍将校兵と公爵夫人の救われないラスト
恋焦がれた将校に騙されていたことを知った公爵夫人が軍に偽装除隊を通報して、男が銃殺される展開が衝撃的で、愛憎が表裏一体であることを突きつけられて怖い。
オーストリア軍中尉ファーリー・グレンジャーが、公爵夫人を虜にして大金をゲットするプロセスの演技と描写が巧み。観客からは騙してるのが良く見える様に、かつ夫人が騙されるのに説得力ある様に演じている。除隊後売春婦と酒の耽溺した暮らしの中、いきなり彼女に訪問されて、公爵夫人に階級差に復讐するかの様に悪態をつくところも、なかなかに良い。
また、イタリア・オーストリア戦争の時代、19世紀後半の貴族の特権的な暮らしや扱いにはビックリ。公爵夫人というだけで、戦地の通行も自由で、敵軍からも丁重なもてなしを受けるのだ。そして、冷たく美しい街の石畳とそこを引き摺るかたちで歩く公爵夫人のスカート
。汚れてしまわない?逆に、何とも贅沢なこと。
全体的には、ルキノビスコンティが何を描きたかったが今ひとつ掴めず、落ち着きが悪い。人間の、特に貴族の堕ちていく様に甘美な魅力を感じてる?それとも、歴史的必然として貴族階級の破滅していく伯爵夫人の姿に、自分を重ねてみている?それとも、庶民階級の若いハンサムボーイとの愛欲に溺れて破滅する貴族夫人に自分を重ねている?正直、良く分からなかった。
夏の嵐は激しく降りすぐに去る
54年ルキノ・ビスコンティ監督。
1860年代オーストリア支配下にあるイタリアヴェネツィアが舞台。伯爵夫人とオーストリア将校とのロマンス。不倫それも敵対するかもという立場の相手との。
主演のアリダ・ヴァリは顔が常にひきつり正直恐い。綺麗って感じじゃなかったな。ドレスの質量は良かったけれど。
冒頭のオペラシーン他、美術・衣装の絢爛さが見事。それに対比して戦争シーンの凄惨さ。長くないシーンに人数も金もかけてしっかりと見せてる。
それまで貧しい人々を描いてきた監督が貴族社会を描くようになった転換となる作品だという。後期は没落したり身を崩す人ばかり描くようになる。今作も冷徹なまでに残酷な結末です。
男爵婦人の 天国と地獄
年増の男爵婦人が 敵の中尉(色男)に騙されて 味方の軍資金まで与えてしまう という恋の話で、
オペラそのもの (原題は官能)
オーストリア占領下におけるイタリアでの反対運動が背景だが、男爵婦人の語りにより 恋が主眼となっている
貫禄の男爵婦人(ヴァリ)に対して 色男(グレンジャー) の嫌らしさ満開で、その手練手管を我々にも知らしめてくれる
グレンジャーは ただの色男ではないことを証明したし、そのキャリアで最高の役柄だろう
大柄なヴァリは衣装映えがし 数々のドレスにも その立ち振舞いにも うっとりだが、最後の場面で ドレスの裾を翻しながら 暗い道をさ迷い、咆哮する姿には 胸が痛む
(個人的には あの数々のドレスのスカート部分の贅沢な質、量感にも、やられる!)
恋の話が総てだが、俳優の演技、衣装、装飾、脚本、撮影、音楽… みな 上手くいった映画ではないかと思う
男爵婦人の天国と地獄を 贅沢に味わってしまった… そんな不思議
お手伝いの人も豪華!
フランチェスコ・ロージー(監督助手)
フランコ・ゼフィレッリ(監督助手)
テネシー・ウィリアムズ(台本協力)
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