ナイト・オン・ザ・プラネットのレビュー・感想・評価
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夜にしがみついて、朝で溶かして…その窓に映る景色と思い出
松居大悟監督の最新作『ちょっと思い出しただけ』を更に楽しく観るための予習として鑑賞。初めて観る、ジム・ジャームッシュ作品。凄いオシャレなのに着飾ってない。
ジム・ジャームッシュ監督も東京を撮りたかったと言っていたらしい。そんなことを聞いたのは、東京国際映画祭で観た『ちょっと思い出しただけ』のQ&Aのとき。自分が知らなかっただけだが、見るキッカケに。クリープハイプと名付けたのもここからだとか。ある種の原点回帰を、尾崎世界観さんも松居大悟監督もしたということだ。
舞台は5つの都市のタクシー。それぞれ行われる密室での会話。何気ない会話に見えて、次第に核が浮かび上がるような感覚。会話劇としてのプラットフォームはしっかりしつつ、道路のように状況は1つとして被らない。なんというか、飾らないのにオシャレだし、その深みが分かる大人っぽさを感じる。オムニバスなので合う合わないは出てくるものの、なかなかクセも無くて楽しめた。
印象的なのはやっぱりパリかな。「パイプ」を取った部分は分からなかったけど、色や視覚が与える先入観に目を凝らす必要はない、そんな気づきが言葉のイロハに含まれていて引き込まれる。過度に色づいた様に見えても、実はソレも計算なんだろう。
そして何より、各国で扱われるカラーがまるで違うのも凄い。人の数だけドラマがあって、青春から恋、喜劇にドラマ…芳醇な映画の香り。次はどんなお酒を片手に観ようかな。
そして東京。第6の街。松居大悟監督はどう意識したのか。両者が原点回帰をした本作。1周したあとに見る景色はいかに。1度観たのに期待が膨らむ。
地球は回るよ。今晩も。
ジム・ジャームッシュ レトロスペクティブ 2021 鑑賞4本目。
夜のタクシーを舞台にした5本のショートフィルム。
1本目。ロスのプライベート・ターミナルでハリウッドのキャスティングディレクターを乗せたドライバーの話。
当時20歳前後のウィノナ・ライダーのキュートさに驚き。映画女優へのスカウトに、全くなびかない野郎メンタル。と言うか鉄のハート。と言うか、今時珍しい叩き上げ志望。いや、アンチ・アメリカン・ドリームの地道な人生設計。対して、ビバリー・ヒルズ住まいのハリウッド関係者と言う対比。ウィノナ・ライダー扮する女子タクシードライバーは、ジャームッシュ自身の価値観の代弁者、って言う気がして。
2本目。冬のマンハッタンからブルックリンまで。東ドイツからやって来た、NYの土地勘も、運転スキルも無いドライバーに代わって、自分で運転して帰るアフリカ系アメリカ人の話。アメリカ移民の先輩と新参者と言うコントラスト。客とドライバーの立場を逆転させるコント。
3本目。冬のパリ。盲目の女を乗せた、コートジボワール移民のドライバーの話。深夜の路上。杖をつく盲目の女。はだけた胸元。目的地が河岸。それでも同情無用と言う小噺。
4本目。ローマで。心臓病の神父を乗せた、無駄なおしゃべりばかりのドライバーの話。無意味な自分語りのおしゃべりが過ぎて、心臓発作の客を見殺しにしてしまう、「わきまえよ」、って言うだけのブラック・コント。
5本目。明け方に近い雪景色のヘルシンキ。3人の酔っ払いを乗せたドライバーの話。不幸を比べてもしょうがない。って言う情けなくって、しまりの無い物語。
流しのタクシーと、その客の会話劇。今夜も、世界中のいたるところで繰り広げられるであろう、ちょっとホンワカしたり、情けなかったり、ばかばかしかったりする、人生の縮図を乗せて、タクシーは走り、地球も回り続ける、って言うオムニバス。
力の抜け方と、浅くて深いかもしれないけど、やっぱりアッサリしている世界観が、やっぱり堪らないわけで。
5本は多すぎるわい!なんて思いながら見始めましたが、飽きずに眠らずに最後まで行けました。これも、ジャームッシュならでは、な作品でした。
地球の縁をタクシーが廻る
時差のある五ヶ国でのタクシーの運転手と乗客の絶妙なやり取りが楽しい一夜だけのタクシー夜話で、ジャームッシュ作品の中では、一番好きで愛おしくなる作品でした。言葉も立場も人種も違うけど、いまもこの星のどこかでみんなが同じように抱えている孤独感や疎外感が、束の間の車内でのやり取りで癒されて、心がほっこりします。改めて、ジャームッシュの才気と温かさが感じられ、うまいなぁって思いました。最後のヘルシンキ篇で夜が明けて美しい朝日が昇って終わるのも、起承転結としてきれいなエンディングでした。エピソードでは、ウィノナ・ライダーとジーナ・ローランズの掛け合いが魅力的なロスアンゼルス篇と、ニューヨーク篇、ヘルシンキ篇がお気に入り。
ウィノナライダーの一話目が見ごたえありすぎて、二話目以降が霞んでし...
1992年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️⭐️✨
『JIM JARMUSCH Retrospective 2021』にて鑑賞(初見)。
何が幸せで不幸かなんて人それぞれ…
だいたい自分の事しか普通は見えていないもんですよねぇ…。
とても幸せな2時間でした!💖✨
*盲目の女性を演じていたのは、『屋敷女』(フランス版)であの殺人鬼を演じていた女優だと初めて知りました!…ショック‼️笑
【旅⑤/旅をするのは…】
ジム・ジャームッシュのデビュー作から6番めまでの作品は、全て旅がモチーフだと思う。
出会い/集い、良し悪しではなく、その成り行きを見つめているのだ。
そして、出会い/集い、旅するのは、僕達のことではないのか。
(※ これら6作品のレビューは書き出しが同じです。すみません。)
書き出しを最初の6作品とも旅を巡る物語と一緒にしているが、この「ナイト・オン・ザ・プラネット」のオムニバスの物語は旅自体がモチーフじゃないし、5つの都市のタクシーを巡る5つの物語でしょという方がいそうなのは分かる。
でも、考えて欲しい。
ロスアンゼルスから始まって、並んだ時計の針が動いて、他の4つの都市を巡るのだ。
僕達が、旅をしているのだ。
僕達は海外旅行をすると、その街でタクシーをよく利用するではないか。
タクシーは身近な移動手段だ。
そして、タクシー運転手とは、一定の密な時間を狭い空間で過ごすじゃないか。
僕は、この5つの都市のほとんどでタクシーを利用したことがあるけれども、国内でも、どこかでタクシーを利用したことがあれば、その土地土地の雰囲気が理解できることは想像できるし、僕達は、この「ナイト・オン・ザ・プラネット」で、それぞれの都市ならではのタクシーを巡る物語を目撃する旅をしているのだ。
(以下ネタバレ)
(ロサンゼルス)世界に誇るエンタメシティで、その業界で働く人は、世界を意のままに出来るかのように振る舞うが、どんなに個性的でキュートでも、着実に我が道を生きて行こうする人はいるというアイロニーだ。ウィノナ・ライダーがやっぱりかわいい。
(ニューヨーク)ほとんどのタクシードライバーは移民のように思う。東ドイツからの移民って、オートマ運転出来ないんだってみたいな、意地悪もあるが、ブルックリンの黒人が明るくて、率直で、そして親切で良い。
(パリ)パリも移民のタクシードライバーは多いし、黒人も多い都市だ。盲目のパリジェンヌのお客は、プライドが高くて、予想通りなのだが、目が見えるかのように感じ取るだけじゃなく、近い未来も予言できちゃう気がする。僕達は実は色んなことが見えていないのかもしらない。ほくそ笑むの姿が面白い。
(ローマ)多くのカテドラルと、バチカン市国を抱え、うっるさいイタリア人と厳粛な宗教が混在する都市だ。
神父は自分の命と引き換えにしても、懺悔を聞かないといけないのかというアイロニーだ。
ところで、僕はイタリア人の友人がいるが、とにかくよくしゃべるし身振り手振りもデカイ。「ダウン・バイ・ロー」のロベルトや、「ミステリー・トレイン」のルイーザも、そうだったが、あのまんまだ。ここで、これを記すことができて、なんか嬉しい。
(ヘルシンキ)高福祉国家では、幸福じゃなくて不幸話を競うのだろうかという皮肉だ。
僕は、2月のヘルシンキに行ったことがあるが、本当に極寒で、歩くなんて考えられないくらいだ。ヘルシンキ湾の島にも、凍った海をバスで渡ったりする。
まあ、僕のレビューでは、その都市ならではの物語を見た気にはならないと思うけど、僕は、旅した気になってます。
面白かった。
ウィノナ・ライダー編は面白いが
ウィノナ・ライダー編がいちばん面白くて星4つ、他は星2つか3つ位。ロベルト・ベニーニはコメディアンのような運転手だったが、何のことをしゃべっていたのか記憶にない。その2人以外はどんな運転手だったのかさえ記憶にない。
オムニバス映画はどのエピソードが面白いか、いくつあったかで評価が分かれると思う。正直この映画で見る価値があったのは、ウィノナ・ライダーのエピソードのみ。ただ、この中のウィノナ・ライダー演じるキャラクターはすごく魅力的だった。お客として乗ったプロデューサーみたいな中年の女性が彼女を気に入るのも納得できる。日本のタクシー運転手はスーツにネクタイのおっさんばっかしで、画一的で面白味はないが、ウィノナ・ライダーみたいな運転手がいたら乗ってみたいね。
<その他>
今まで自分が乗って驚いたタクシー
・イギリスで、運転手がラフな服装で長髪の若い男性だった
・タイで、助手席に自分の彼女を乗せていた
・中国で、急いでって言ったら、センターラインをオーバーして何十台も追い越していき、死ぬ思いをした事
・中国で、いま家に帰るところで、そっちは反対方向なのでと言って乗車拒否された
昔観たのに、覚えていなかった...(苦笑)
5話になっていて、そのどれもが面白くて粒揃いな良作品。中でも良かっ...
5話になっていて、そのどれもが面白くて粒揃いな良作品。中でも良かったのは1話目のロサンゼルスの生き様みたいな話と、4話目のローマの死ぬやつ。観ているだけだから笑ってられるが、実際にこんな運転手さんにあってキモい話を延々と聞かされたら死ぬかもしれないな、と思った。
タクシーあるある、かしら。
一言「掘り出し物!」。
オムニバス(本でいう短編集)形式で、プラネット?宇宙物?。
全然違いました。
タクシーの中には、運転手とお客のみ。外は真っ暗闇の中。
そんな2人(組)の、密室での会話劇。
広い世界の片隅で、いろんな人が生きている。
その30分ほどの間だけ、狭い世界を共有する。
運転手がそれぞれ個性的。
・デカいタクシーを乗り回す、へービースモーカー(ウィノナ・ライダー!)。
・ベラベラ1人で喋り、お客が神父さんと知って車内で懺悔し始める(ロベルト・ベニーニ!)。
・アメリカに来たばかりで、言葉も運転もイマイチな移民。
心温まる話もあれば、クスッと笑っちゃう皮肉な話もあり。
タクシーの中って、いろんな人生模様が詰まってるなあと。
今回wowow の「ミニシアターに愛を込めて」(by斎藤工さん)で特集されていて。
そうそう、ミニシアターの小さな箱で見ると。
より味わい深かったかもね。
予備知識ゼロで見たので。1991年、今から30年前の作品となるとこんな人も。
ジーナ・ローランズ!。
ピンヒールにシュッとしたスーツ。できる仕事人役が、惚れ惚れカッケー!。
ウイノア・ライダーとの共演。最高でした。
5編で2時間ちょっと。気楽に見れる「ポップコーン映画」に認定🍿。
5都市のタクシーの運ちゃん
ロスはウィノナ・ライダーのタクシーにジーナ・ローランズが乗ってくる。
NYは不慣れな運ちゃんの代わりに客が運転する。
パリでは盲目の客ベアトリス・ダルが一枚上手。
ローマでは喋り続けるロベルト・ベニーニのタクシーに乗った神父さんは運が悪い。
ヘルシンキで乗ってきた不幸な客が運ちゃんの不幸に負ける。
面白いオムニバスだ。
タクシーの思い出、 いくつもいくつも思い出されてきました・・
Tom Waitsのしわがれた歌がタイトルバックに流れて、夜通し働いたタクシー運転手たちの 泥のように疲れた体をいたわってくれているようだ。
思い出せばいろんなタクシーに乗ったな。
誰にとはなしにポツリポツリ喋る運転手さんもいるし、喋りたくないオーラの運転手もいる。乗せてもらうこちらも同じくその時その時だ。
・お金ないとき、メーターを早めに倒してくれた運転手さん。感涙。
・ぶちキレられて急ブレーキを踏まれたこともあるし、
・お互い初めての街で一緒にカーナビを見ながら超遠回り。歩いたほうが早かった。
済まなさそうに「お金もらえません」と 東北から山梨に昨日来たばかりの運転手さんだった。なに言ってんですか不安なのは僕も一緒。握手して別れた。HAGしたかった。
「タクシーの車内」という狭い空間を、そのいっとき たまたま共有する。あすこは一期一会の地球(プラネット)の縮図なのだ。
日本の深夜労働者は600万人だと聞いたことがある。
Tom Waitsのドラムビートは労働歌。日本でならヨイトマケの唄か岡林信康の山谷ブルースが流れそうなエンディングってところだろうか。
「深夜食堂」冒頭の新宿の大ガードのシーンが大好きな僕。タクシーがたくさん映ります。
・・若者の軽快なタクシー乗車なら宇多田ヒカルの「トラベリング」なのでしょうが、やっぱり白眉は吉田拓郎が由紀さおりに歌わせた「ルームライト」です。
これ以上の夜のタクシーの唄はありませんね。
・・・・・・・・・・・・
《おまけ、付記》
人間をお客として乗せるわけではないが、夜通し走るトラック運転手の僕としては、本作品は言葉不要のシンパシー、=仲間意識に満たされる5つのオムニバスであった。
12月24日、クリスマスイブにも、当然 夕方から朝までのお仕事な訳で。
10トントラック一杯の荷物を積み下ろししながら、僕は同僚たちと笑ったものだ
・ケーキ食べたいね
・サンタさんってさ、深夜労働者なんだよなー
・奥さん今夜もお家でひとりぼっちなんだね
・辛いけど頑張ってるよな年寄りなのにね
・俺たちとおんなじ運送業やろ?サンタさんって仲間だし、なんかさぁ“友だち”って感じするよなァ
タクシーの運転手さんたち、
どうぞ心も体も壊さないで下さいね、
ご安全に。
・・・・・・・・・・・・
あぁ、、もう!
こんなん作っちゃうジャームッシュ超可愛い。
ロサンゼルスに女優を断る女の子がいて、NYに口は悪いけど心優しい青年がいて(ちょっとぼんやりおとぼけの老人がいて)、パリに失礼で身勝手でコンプレックスバリバリのブラックと目が見えてる人よりわかっている勝気な盲人パリジェンヌがいて、ローマに自分語りに一生懸命で神父が死んでいることに気づけない陽気で変態ちっくなナイスガイがいて、ヘルシンキに内向的だけど心優しいパパさんたちがいて、、、
同時刻の各都市で起こっているワンシーン。
旅行に行きたくなるなあ。日本が加わるとしたらどんなストーリーになるんだろうな。
京都の仕事終わりの舞妓さんとかが乗ってくれたらいいな。
タクシー
ロサンジェルス。タクシードライバーのウィノナ・ライダーは空港でジーナ・ローランズを乗せる。キャスティング・エージェントをやっていて新人発掘が専門なので、タバコを吸いつづけるライダーの個性を気に入り女優の道を進めるが、彼女はタクシードライバーの後整備工になるというしっかりとしたビジョンを持っていた・・・面白くない。
NY。なかなかタクシーを捕まえられない男の前に止まったタクシーは、東ドイツからやってきたほとんど素人の運転手。ブルックリンがわからず、運転も下手なので、男が代わりに運転することになった。オチもわかりそうなものだけど、かなり笑える。
パリ。カメルーン大使に会う二人の客に腹を立てた運転手は二人を降ろす。継ぎに拾ったのは盲目の女性。目が見えないとはどういうことなのか、ちょっとだけ考えさせられる。
ローマ。運転手はロベルト・ベニーニ。神父を乗せたことから懺悔を始めるが、羊ローラとセックスした話、義姉とやってしまった話。心臓の悪い神父はそのまま死んでしまう・・・ベニーニの一人芝居っぽい演技には毎度感心させられるが、かなりブラックなのでそれほど面白くもないかなぁ。
ヘルシンキ。三人の酔っ払いを乗せたミカ。クビになったことなど不幸な話をするが、ミカの話を聞いてしんみり。不景気・不況、失業問題なども深刻なのかもしれない。
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