「地球は回るよ。今晩も。」ナイト・オン・ザ・プラネット bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
地球は回るよ。今晩も。
ジム・ジャームッシュ レトロスペクティブ 2021 鑑賞4本目。
夜のタクシーを舞台にした5本のショートフィルム。
1本目。ロスのプライベート・ターミナルでハリウッドのキャスティングディレクターを乗せたドライバーの話。
当時20歳前後のウィノナ・ライダーのキュートさに驚き。映画女優へのスカウトに、全くなびかない野郎メンタル。と言うか鉄のハート。と言うか、今時珍しい叩き上げ志望。いや、アンチ・アメリカン・ドリームの地道な人生設計。対して、ビバリー・ヒルズ住まいのハリウッド関係者と言う対比。ウィノナ・ライダー扮する女子タクシードライバーは、ジャームッシュ自身の価値観の代弁者、って言う気がして。
2本目。冬のマンハッタンからブルックリンまで。東ドイツからやって来た、NYの土地勘も、運転スキルも無いドライバーに代わって、自分で運転して帰るアフリカ系アメリカ人の話。アメリカ移民の先輩と新参者と言うコントラスト。客とドライバーの立場を逆転させるコント。
3本目。冬のパリ。盲目の女を乗せた、コートジボワール移民のドライバーの話。深夜の路上。杖をつく盲目の女。はだけた胸元。目的地が河岸。それでも同情無用と言う小噺。
4本目。ローマで。心臓病の神父を乗せた、無駄なおしゃべりばかりのドライバーの話。無意味な自分語りのおしゃべりが過ぎて、心臓発作の客を見殺しにしてしまう、「わきまえよ」、って言うだけのブラック・コント。
5本目。明け方に近い雪景色のヘルシンキ。3人の酔っ払いを乗せたドライバーの話。不幸を比べてもしょうがない。って言う情けなくって、しまりの無い物語。
流しのタクシーと、その客の会話劇。今夜も、世界中のいたるところで繰り広げられるであろう、ちょっとホンワカしたり、情けなかったり、ばかばかしかったりする、人生の縮図を乗せて、タクシーは走り、地球も回り続ける、って言うオムニバス。
力の抜け方と、浅くて深いかもしれないけど、やっぱりアッサリしている世界観が、やっぱり堪らないわけで。
5本は多すぎるわい!なんて思いながら見始めましたが、飽きずに眠らずに最後まで行けました。これも、ジャームッシュならでは、な作品でした。
いや、まったく、「人間図鑑」でしたよ、これ。
監督の観察眼の鋭さといったらないです(笑)
1本目
〉アンチ・アメリカン・ドリームの地道な人生設計
なるほどね・・。呆気にとられるスカウト。
どのシリーズも対話が微妙に成立しない、ズレかたのおかしみでしたねー😁