劇場公開日 1970年10月31日

「今まで見た黒澤映画で一番好きです。」どですかでん rockoさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今まで見た黒澤映画で一番好きです。

2014年8月19日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

悲しい

黒澤映画は、七人の侍、用心棒、羅生門、白痴、夢、八月のラプソディー、まあだだよ等観ました。初期の娯楽作品は見ごたえがあり好きですが、後半生の作品は俳優に無理やりよがりの美意識や説教を代弁せているようで、なん気持ちが悪いんですが、この作品はかなり好きです。群像劇のほとんどの登場人物がなにか問題を抱えていて、何か改善するわけでもなくただひたすらに負のサイクルで転げまわるような印象を受けました。いや、むしろ彼らには負のサイクルなどという意識はなく、それがただの日常であるのでしょう。初めと終わりに出てくる、自分を電車の運転手だと信じる精神に障害を持った青年がただひたすらに同じサイクルを毎日繰り返していく姿が映画のテーマを象徴しているように感じます。
メキシコの巨匠アルトゥーロ・リプスタインの作品を思い出させます。だれもが目を背けてしまいたいけれども現にそこに存在する、夢も希望も救いもない「ただの」現実が描かれていると思います。

とりあえず今まで観た黒澤映画の中ではぴか一でした。

rocko