「それぞれの生活 それぞれの人生」どですかでん しゅうへい(syu32)さんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの生活 それぞれの人生
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DVDで鑑賞。
原作(山本周五郎「季節のない街」)は未読です。
黒澤明監督初のカラー作品。
元画家だけに、色彩感覚が常人とは違っているのか、バラックや背景などが独特な色使いで表現されていて、ファンタジックな世界観をつくり出していました。
多種多様なバラックが立ち並んだ表通りから隔てられ、ごみ溜めのような景色が広がる地区。そこでは、様々な氏素性の人々が肩を寄せ合って暮らしていました。
そこに住んでいる人々の様子が、まるで万華鏡のように展開されました。様々な事情を抱えながら日常を生きる姿を、オムニバスのような形で捉えていました。
お母さんとふたり暮らしの六ちゃんは、自分を都電の運転手だと思い込んでいる知的障害のある少年。毎朝、空想の電車を発車オーライ。夜遅くまで地区を一周しています。タイトルの「どですかでん」とは、彼の運転する市電の走行音を模した擬音。六ちゃんが口に出して、走っているのでした。
―時折挿入される六ちゃんの市電。物語の節目節目で登場し、狂言回しの役割を果たしていました。「どですかでん」と聞こえれば、それぞれの人生模様は次の展開へと移行しました。まるで電車が各駅停車して、それぞれの駅の様子を覗き見るような感覚でした。切り取られていく人生の断片…。
日常は千差万別であり、決して一様ではありません。涙があり、笑いがあり、恋があり、ときには情欲が存在する…。
それらを内包しているのが、人間の営み…。我が道を突き進むことが、正しい生き方じゃないかなと思いました。
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