飛べ!フェニックスのレビュー・感想・評価
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映画ならでは最高のカタルシス
1965年公開の「」を見ました。
若い頃好きな監督はと聞かれるとR・アルドリッチと答えていました。そのアルドリッチ監督の数多ある作品の中で、最も好きな1本です。初めて見たのは中学2年の時(TV)で、あまりの面白さに、翌日理科の実験室の日だまりの中でもその余韻がまだ続いていたのをはっきり憶えています。
石油掘削会社の輸送機が、砂漠の油田基地から離陸した。
乗客と荷物を満載した双胴機は砂嵐に遭遇し、回避のために航路を大きく逸脱したが、とうとうエンジンが停止してサハラ砂漠の真ん中に不時着する。
その際に2名が死亡、1名が大怪我をする。
砂漠の中に12人の男達が取り残された。
残された水が少なくなっていく中、いつまでたっても姿を見せない捜索隊に彼らはいらだってくるのだった。
昼は灼熱、夜は極寒の砂漠からのサバイバルを描いた映画です。
女は写真と妄想以外全く出てこない男だけの生き残りをかけた地獄のような日々です。
登場人物をざっと説明します。
タウンズ機長(ジェームズ・スチュアート)
年老いた操縦士。頑固でプライドが高く、人の言うことを聞こうとしない。
航空士 ルー(リチャード・アッテンボロ-)
機長の相棒だが、酒に目がない。
医者 ルノー
唯一冷静な判断を維持し続けるが、ラクダに乗って砂丘の向こうにやって来た一隊によって殺害される。。
設計士 ハインリッヒ・ドーフマン(ハーディ・クリューガー)
頭脳は明晰だが、冷徹で人の気持ちを解さない。双胴機を解体して単発の飛行機に作り直し、脱出することを提案するが、その作業では自分がボスだと言い放つ。
ハリス大尉(ピーター・フィンチ)
英国軍人 この極限状態の中でもワトソン軍曹に対して軍隊としての規律ある行動を求めるガチガチの軍人。
ワトソン軍曹(ロナルド・フレイザー)
ハリス大尉の従卒だが大尉に深い恨みを持ち、オアシス探索に出発する際に仮病を使う。また、大尉が砂丘の向こうに隊商がやってきてコンタクトに行く時にはハッキリと拒絶する。
採油夫 コッブ(アーネスト・ボーグナイン)
精神的に問題があり、会社を解雇された。喜怒哀楽が激しい。ハリス大尉のオアシス探索に同行を希望するが断られ、黙って後を追いかけるが、砂漠の中で死んでいるのが発見される。
クロウ
他人のすることを何でも茶化す下品な男。
スタンディッシュ
会計士の老人。やることが皆からずれており、体力も無く陰に回る存在。
ベラミー(ジョージ・ケネディ)
石油会社従業員の大男。
ガブリエル
不時着時に足が潰れて動けなくなる。病気を知らせてきた妻に会いに行く途中だった。もうそれは叶わぬと知り、自ら命を絶つ。
カルロス
子供への土産に小猿を持っている男。ハリス大尉のオアシス探索に一緒に出かけるが、戻って来なかった。
こんな「濃い」男たちの生死をかけた葛藤が綴られていきます。
次々に希望の目がたたれていき、最後はハインリッヒの途方もない機体改造に望みをかけるしかなくなります。
機長とハインリッヒは反目しつつも、作業を始めます。
水もなくなり、体力の限界が近づく中なんとか完成が見えてきた頃、ハイリッヒが玩具の飛行機デザイナーだったことが判明します。
機体が完成し、いよいよ大空へ舞い上がるときが来ました。
この映画に登場する機体はフェアチャイルド社のC-82軍用輸送機。
ショットガン式のカートリッジによるエンジンスターターなのですが、残るカートリッジは7発だけ。
1発目、カラカラと回るがすぐに止まるプロペラ。2発目、3発目、4発目も同じ。
残りは3発。これでエンジンがかからなければこれまでの苦労と希望は水泡と帰す。
そうと知りながらタウンズ機長はシリンダー内の掃除に1発を使おうとする。
「やめろ!」と絶叫するハインリッヒ。
それを無視してクリーニングに1発消費するタウンズ。
6発目、弱々しくプロペラが回り始める。
機長はチョークを絞ったりして、懸命に回転を維持しようとする。
ゆっくりだった回転は、徐々に力強く轟音を上げて回り始めます。
狂喜乱舞して踊り出す男達。
映画ならでは最高のカタルシスです。
これは映画でなければ描けません。
昔TV洋画劇場で見た懐かしの作品集
昔(少年期に)テレビで見た作品の中で強烈に印象に残り、その後見返していない作品の記憶がどれだけあやふやなのかを確認したくなりDVDで鑑賞した。
本作を見たのが白黒テレビだったのかカラーテレビだったのかもう忘れましたが、当時のテレビ洋画劇場って2時間枠だったのでCMを時間を考えると精々100分程度の枠になり、3時間位の大作だと前後編2回位に分けて放送するのだが、本作の142分位だと1回で放送するので40分位カットされてしまいます。
カラー作品を白黒のブラウン管テレビの吹替えで、更に40分カットされたものを見て、本当に作品を見たと言えるのかどうかは分かりませんが、それでも強烈に印象に残っている事に意味はあると思っています。
正直、今回改めて見直して、かなり記憶とは異なっていましたが、芯の部分は外さず見ていた様にも感じられた。
その後の70年代にブームになった“パニック映画”の先がけの様な作品で、人間の人種・国籍・宗教・文化・仕事・性格等々による品種分け図鑑的な面白さを少年期に感じ取っていたのだと思います。
しかし本作の場合、よくある通常のパニック映画とは違い死ぬ方にけっこう善人が多くて、生き残った者と死んだ者とのタイプの違いや生死を分けた理由を考えるのも面白いのかも知れないと思った。
アルドリッチの力作
企業再建の物語としても観れる面白さ
なかなかに面白いので、テレビの映画番組の常連作品としても有名
一種の密室劇となって、それぞれの登場人物の個性のぶつかりあいが見所となる
改めて観ると成る程、ロバート・アルドリッチ監督が好きそうな個性的な俳優ばかり
ジェームズスチュワートの老パイロットの演技はさすが
またその相方役のルー航法士役のリチャード・アッテンボローが好演している
終盤の急造飛行機のエンジンがかかり、砂漠を滑走し出すシーンは手に汗を握り、飛び立った時のカタルシスはものすごいものがある
本作は飛行機物のジャンルとして扱われることが多いが、実は企業再建物語として観れば、誰しも身近に感じられる物語になっている
そこが本作が何度もテレビ放映される程愛される秘密だろう
機長は倒産寸前の会社の老害社長
航法士は人柄はいいが仕事はいまいちな専務
大尉はイケイケドンドンだけの営業担当常務
軍曹はその無能部下
飛行機技師はくそ生意気な転職してきたばかりの若手経理課長で大胆なリストラを提案する
そんな具合に見て行けば身近に感じる事ばかりで誰しも感情移入できるのだ
フェニックス、不死鳥
そのものズバリのタイトルだが、この文脈で観ればこのネミーングがさらに深みが出るのだ
飛行機映画の傑作!!
何で最近の映画って、なんでもかんでも言葉で説明しようとするのか…。説明過多でイライラする。
それにひきかえアルドリッチ!
無駄な台詞、無駄なショットが一つもないっ!!
この映画も14人の登場人物のバックグラウンドを最初の10分弱で巧いこと観客に判らせてくれる。
アルドリッチの演出の巧さだけではなく、俳優も飛び抜けてイイ!!
ハウメニいい顔の男たちが勢揃い。顔は男の年輪だあー。顔に深く刻まれたシワが物語るそれぞれの背景、歴史。
なんという存在感そして説得力。最初の10分で観客はこのドラマに深く取り込まれる。
砂漠に不時着した双発双胴機。機体は半壊し動かない。飛行ルートからはずれ助けが来る見込みもない。乗員の飲料水も残りわずか。さあ、どうする?どうなる!?極限に追い込まれた男たちのドラマ。
生き延びるのかどうなのか?そのサバイバルなストーリーを追うだけで充分面白い。
それだけでなく、バックグラウンドも様々な男たちをどうやってまとめていくか?…という部分もあり、中間管理職のお父さんたちも必見の人間ドラマだったりもする。
機長(ジェームズ・ステュアート)や設計技師?(ハーディ・クリューガー)といった主役級の人物も勿論イイのだが、個人的にはワトソン軍曹という超小物の脇役の心情がなんつうか痛ましくてねえ。観客にいろんな見方をさせてくれるアルドリッチの度量の広さがイイ!!
サバイバルに胸を躍らせるもよし、人間ドラマに涙するもよし、アルドリッチ映画の傑作!!
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