「姉妹、夫婦、親子、ご近所、助け合いが美しい」となりのトトロ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
姉妹、夫婦、親子、ご近所、助け合いが美しい
いつもさつきの立場で見ていた。
子供ながらにどれだけ背負っているのかと。
常にできることを精一杯して、妹の面倒を母親の分まで見て、家事をこなし、新しい学校にも早々に馴染む順応性、母に会いたい気持ち、母を心配する気持ちを自分自身もたくさん抱えているのに、それを表に出さずに、周りに心配をかけないよう張り詰めて、子供が子供でいられない環境の中で過ごしている。
だからこそ、母親の病状が崩れ、父親も仕事中にトラブルが起きると、動転して気落ちして、いっぱいいっぱいのコップが溢れるかのようにいっきに泣いてしまう。
子供の頃は、そんなに抱え込んでいる姉をよそに好き勝手しているめいが、幼すぎて、足手まといな存在として見ていたが、産後幼い子供と見たら、子供はめいの気持ちで見ているようで。お弁当を食べたいところや、オタマジャクシからどんぐり、ミニトトロへと興味の対象がどんどん変わり知らぬ間に遠くまで動き回っているところなど、幼児ならではの行動パターンがリアルに描かれている。
そして、子供の頃は気付かなかった、おとうさんの器の大きさ。元々民俗学者なので自然や日本古来の言い伝えなどには詳しいのだが、それを差し引いても子供達への気持ちに寄り添いながら、子供達が平常心を保てるように常にゆったりと接している。引っ越しして子供達だけと暮らすほどの妻の容態。シングルファザー状態で、気がかりな事、様々あるだろうに。家庭的で諭し上手で、博識で、心の余裕がある素敵なおとうさん。
トトロと名乗るシーン、子供の頃は自分も風を感じるかのごとく見ていたが、大人になると、あんなに口からの風を浴びて、口臭すごいのだろうかとか、気になる。歯は草食動物のような歯で、山の神だし生き物を食べたりはしていなさそうなのだが。。
カンタの不器用ながら男らしい優しさ、おばあちゃんの身内のように接してくれる優しさ、めいを探し回ってくれる近所の畑の人々、みんなが周りにも心を配りながら暮らす、首都圏ではなかなか見られなくなった日本の風景。
舞台となった昭和30年代の日本も、今も、日本人が美徳とする、我慢や忍耐、思慮深さや配慮の精神は令和となった現在も変わっていない気がする。だからこそ、令和になっても心に響く作品。