劇場公開日 2018年12月14日

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「映画オタクがおっさんになって、25年ぶりに本作を観たよ」ディア・ハンター しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画オタクがおっさんになって、25年ぶりに本作を観たよ

2018年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

オレが一番よく映画を観てた時は高校生のころ。特に「ベトナム戦争」と「マフィア」ものにハマっており、友人は「バリバリ伝説」と「あぶ刑事」に対し、「プラトーン」と「アンタッチャブル」ばかり観てた。

まあ、ぶっちゃけ、オレはひねくれたガキだったわけだ。今ではまあ、いい思い出ではある。

久々に一人で会社帰りに映画に行きたい、というと、あっさりOKが出た。さて何を観に行こうか?「ファンタビ」?「来る」?

このもと変態高校生が一人で映画を観るんだぜ?そんなわけないじゃん!





「ディア・ハンター4K」

当時誰に対してなのかさっぱりわからないが、「ディア・ハンター」を見て、観終わった達成感に恍惚な表情を浮かべていたころである。だけど、それはあくまで「完走した」という達成感だけであって、正直デ・ニーロがでようが、ロシアンルーレットが恐ろしかろうが、「完走した」だけで得意になってただけである。

さて、25年後。これを劇場でまた観る機会があるのもすごいことだが、これを選択するオレは当時と変わらず変態である。

だが、観終わった印象はさすがに変わった。

意外と長く感じないのだ。特に最初の1時間30分ちかく使う結婚式と鹿狩りが意外とすっきりしている。

これは当時のオレが持っていなかった、マイケルの、ニックへの視線とリンダへの視線に注目できたからでもあり、スタンの、ブーツを貸してくれないマイケルへの「あの」一言がもちろん、その後の展開に緊迫感を与えるからだ。

もちろん、単純に「ゲイ」映画というつもりはない。(おいおい、前回の「ボヘミアン・ラプソディ」に続いてまたこのネタか、というのは本当に偶然である。)。

だが、その視点もコミで、でも財布にひっそりと忍ばしているリンダの写真を持つマイケルの心情もなんとなくわかる。

そしてベトナム。いきなり捕虜になり、いきなりのロシアン・ルーレットの展開は覚えてはいたが、サイゴンでのニックの最初に行った賭場に、先にマイケルが居たことに驚いた。こんなシーンあったんだ!

だが、なぜマイケルはあそこにいたのか。そう、25年後のオレが新たに抱いた本作の最大の謎はここだった。

今ではチミノのコメンタリーなど出ているので、そのシーンについて、確認することはできるかもしれない。だがオレはこのたび、こう
解釈した。

1)ニックとの「どちらかが、あるいはどちらとも昇天するかもしれぬ、アツイ打ち合い」が忘れられなかった。

2)マイケルとニックが「戦争の傷」をどう対処したか、の分岐点としての賭場でのマイケルを便宜上登場。

1)について、もちろんマイケルに死ぬ気はない。しかし「1発」に賭ける思いは「鹿狩り」同様、マイケルの信念によるものだ。マイケルは「鹿狩り」に関しては、異常なまでの「神格性」をもって望んでおり、それを満たすのはニックとでないとできない、と序盤に語っており、そのストイックさがロシアン・ルーレットで発揮。

それは、もうイッてしまうほどの事だっただろう。

2)半分冗談、はさておき、2)については、まさしく「ロシアン・ルーレット」こそが彼ら青年の「戦争の傷」をどう癒すかの分岐点。

マイケルにとっては、「ニック(ともに過ごすこと)こそ青春」であり、ロシアン・ルーレットはある意味、それを確認するものだったが、ニックにとってみれば、「ロシアン・ルーレットで勝つことがすべて」とすり替わってしまった。

マイケルにとっては、「ニックとイクこと」が勝ちであり、ニックにとっては、「ロシアン・ルーレットでイク」ことが勝ちになってしまった。

車に乗ったニックは、マイケルが追いかけていることに気付いていなかったのだろうか。それとも。

追記

4Kについて。

正直、過去の「記憶の画質」とあまり変わらないものだったが、まあ、劇場で観れたことで良しとしよう。

追記2

みんな若い。ウォーケンはイキイキ、ピチピチしているし、ストリープも彼女の映画史上最も美しい。

しかし、デ・ニーロ。

特にデ・ニーロが「美しい」。

本作の長さを感じさせなくさせる一番の要因は間違いなくデ・ニーロの存在。

追記3

God Bless America

ロシア系移民の彼らにしてみると、ベトナム戦争に行くことこそが、アメリカ人としての誇りを得るもの、アイデンティティを獲得する方法だったわけである。セリフにあるように、その地を離れたかったわけでもなく、ましては敵兵を撃ち殺しに行きたかったわけではない。

そんな彼らの歌う「アメリカ万歳」は「戦争批判」ではない。そこから考えると、マイケル・チミノは「アジア系」に差別的な作品として「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」も含め、言われてきたようだが、「移民」の境遇やその生活に密着した描き方をしてきただけなのが分かる。

しんざん
えびちゃんさんのコメント
2022年11月6日

なるほど、ニック達は敵国ロシア系のアメリカ人なのですね。そう考えると、面白さが増しました。

えびちゃん
miohanさんのコメント
2020年3月17日

なかなか面白い感想でした。

miohan