「アカデミー賞ものの魅力溢れる登場人物たち」天空の城ラピュタ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー賞ものの魅力溢れる登場人物たち
総合90点 ( ストーリー:90点|キャスト:100点|演出:95点|ビジュアル:85点|音楽:90点 )
宮崎監督の全盛期の傑作のひとつ。重い社会的な主題があった「風の谷のナウシカ」と比較して、もっと娯楽方向に向けた少年少女の命懸けの大冒険物語。
数々の飛行船や見慣れない乗り物が登場して空を飛ぶ描写は、これぞ空にあこがれる宮崎監督の本領の発揮場所。時に軽快に、時に危険の中を死と隣り合わせに大空を縦横無尽に駆け回る。鉱山の親方と海賊の兄貴の喧嘩や全くへこたれない海賊で女傑のドーラの存在など、全体に軽快で喜劇調で描かれるのはとても楽しく、それでいて海賊と軍隊に追われ地底から雲の上まで激しく場面が移り変わる展開の早さはとても興奮するし、その合間合間にある美しい場面には魅了される。悲劇的浄化の後の結末も爽やか。これほどの作品が公開当時は興行収入が全く振るわなかったのだから不思議なものだ。
この作品の大きな長所は個性的且つ魅力的な登場人物の面々。主人公のパズーとシータの純粋な魅力は言うに及ばずだが、知勇兼備で頭の回転の速い海賊ドーラの凄まじい行動力と豪快さと指導力には終始圧倒され続ける。これでは髭ずらになって筋肉もりもりの息子たちがいつまでも「ママ~」と情けない声を出すわけだ。。
そしてもう一人おおいに気に入ったのが悪役ムスカ大佐。この手の話は良い悪役がいないと物語が締まらない。頭が切れてその頭脳を自分の野望のためだけに使い、正体を隠して秘かに大きな計画を進めていく。自分の目的のためには人の命など何の価値もないと言わんばかりの冷酷で尊大な姿がまさに帝国の王族であり、かつてのラピュタの帝国としての姿を象徴している。悪役だがこれまた大きな存在感があったし、こういうやつってたとえ悪くても悪人としての魅力がある。
アニメとはいえども、個人的にはドーラとムスカは間違いなくアカデミー助演女優・男優賞。二人を演じた声優も素晴らしかった。ほんの少ししか登場しない鉱山で働く親方夫妻やタイガーモス号の機関士ですら存在感を見せつけるし、人物ではないがロボットは悲しい姿もありラピュタの儚い運命を見守り大きな役割を果たしている。
そして久石譲の音楽がナウシカに引き続いてまた素晴らしくて、物語のあらゆる雰囲気を盛り上げてくれていた。