椿三十郎(1962)のレビュー・感想・評価
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『いい刀はサヤに入って入る。お前たちもサヤに入ってろよ』
『いい刀はサヤに入って入る。お前たちもサヤに入ってろよ』
娯楽作だが、明治維新後の維新政治に対するアイロニーなのかなぁ?と思った。
士農工商の封建主義が崩れ、まるで、士族の地位か崩れ、自由な身分社会になった。しかし、身分制度は名前を変えただけ、相変わらず、旧士族は残るが、幕府がなくなり、士族の思うまま、維新後、士族の暴走のまま、大日本帝国は二つの戦争を経験する事になる。この映画はそれをアイロニーで語っている。やはり、傑作だ。
イデオロギーを抜きに見ても面白い。まぁ、途中から脚本は暴走するが、許せる範囲。
ザッツ・エンターテイメント時代劇
もっと、硬派な決闘シーンばかりある時代劇モノかと思いきや、今見ても楽しめる痛快エンターテイメントだった。言葉も聞き取りやすく、金魚のフンならぬ金魚のウンコって言ってるし。効果音、BGMも良い。三船敏郎が型破りな腕利き素浪人役で見事にハマってる。加山雄三、田中邦衛も若い!敵の用心棒・仲代達矢との掛け合い、騙し方が痛快で、ラストの決闘もブシャーってのも良い。緊張感を和ませるのが城代家老夫人と娘ののんびりした会話、人質として捉えた押入れの男。エンタメ要素の重要なエッセンスとなっている。椿の赤と白の合図は傑作。あばよ!
豪胆知略と流麗剣撃、ふたたび!
"用心棒" の姉妹編的作品。
DVDで3回目の鑑賞。
原作(日日平安)は未読。
藩の不正を暴こうと集まった9人の若侍。浅慮な彼らをひょっこり現れた浪人・三十郎が導いて、大胆な知略と剣撃で悪と戦う様を描いた痛快エンターテインメント時代劇。
名前を訊ねられれば、庭に咲く椿の花を見、「椿三十郎。もうすぐ『四十』郎だがな」。すぐ嘘と分かるし、名乗りたくない意思が分かる。洒落っ気もあって、センスがいい。
正義に燃えて突っ走る若者に待ったを掛け、「見ちゃいられねぇ!」と先導。彼らを見事コントロールして、敵を騙して懐に入り込み、全てを掌の上で転がすと云う大胆さ。
言うことがいちいち的を射ているために、反論しようにもこちらはぐうの音も出ない。そして、ことごとくその通りになっちゃうもんだから、着いて行かざるを得ない(笑)。
ハラハラ・ドキドキさせてくれるストーリーは何回観ても楽しいし、抜群の面白さがあって、全然飽きが来ません。
スリル、アクション、ユーモアのバランスが絶妙な塩梅で配分されていて、これぞエンターテインメントだなぁ、と…
三十郎と室戸半兵衛の決闘が凄まじい迫力でした。静寂の睨み合いから壮絶な血飛沫を伴う決着と云う、静と動の演出が秀逸で、一瞬の内に散った命の衝撃に息を呑みました。
[余談1]
ちゃんとした刀は鞘に入っている。
心に刻もうと思いました。
[余談2]
加山雄三と田中邦衛の口論はまるで若大将対青大将(笑)。
[以降の鑑賞記録]
2022/11/26:Amazon Prime Video(東宝名画座)
※修正(2024/06/26)
とても面白い
多分一番最初に見た黒沢映画だったと思う。この映画で黒沢作品は面白いんだなあと、言われているだけのことはあるなと思った記憶がある。そうして改めて見たらやっぱりとても面白かった。ドラマが冒頭からドライブしていて、最後までそのまま走りきる感じでよどまない。
登場人物がみんなキャラが立っていて可愛らしかった。殺陣もすごい迫力だった。
三船敏郎格好良い
ものを知らないのでこの映画が有名なことを少しも知らずに視聴。
良かった。
ダイ・ハードを観た後だったので、これはこれで日本の強さ格好良さなんだなと。
日本にしか作れないカッコ強いものというか。
ジョーク要素もあって最高。
しかし最後のは・・・
素晴らしいだけあって血の量が白けさせてしまうので
少し残念であった。
紅白の椿が流れる 娯楽時代劇の秀作
総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:90点|演出:80点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
頭も腕もきれるのにどこか緩くて滑稽さがある三船敏郎演じる椿三十朗の圧倒的存在感は言うまでも無い。その他にも気持ちだけが先走りして空回りをする見るからに危なっかしい個々の区別はつきにくい若侍の集団、全く緊張感がなく緊迫した空気を和ます奥方、時々押し入れから現れて若侍以上に存在感を出す捕虜、昼行灯のようで実は一番正確に状況を把握している切れ者の城代家老、三十朗同様の抜き身の危険さを持つ仲代達也演じる半兵衛。敵味方とも魅力溢れる登場人物が多い。
狡賢く悪いやつらをやっつけるための話だが、そのための登場人物の個性と動きが作品を面白くしているし、それぞれが話を作るだけでなく作品を良く面白くする役割を持っている。危うく罠にはまって命を落しそうになった若侍が帰宅すると、捕虜がのんびりとお茶漬けを畳の上で食べているだけで雰囲気が変わる。そのあたりの緩急の付け方が上手いし、登場人物の役割にもそれは言える。
殺陣は最新の作品に比較すれば強引さがあってそれほど評価はしない。しかし相手のことを出し抜こうとする互いの陰謀と読みあいが刺激的だし、そこに潜入と斬りあいがあって緊迫感を作っている。その中に時々間の抜けた場面を挿んで滑稽な雰囲気も作り出し抑揚をつける。椿の紅白の区別は感心すると同時に可笑しいし、最後の決闘の場面の一触即発感は映画史に残る名場面。ただし血飛沫は飛びすぎ。
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