劇場公開日 1974年4月13日

「追憶の曲がピッタリ」追憶(1973) sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 追憶の曲がピッタリ

2025年9月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

戦時下なのに、満員御礼の酒場。
そこで偶然再会するハベルとケイティ。
眠っている軍服姿のハベルの髪に触れようと、ケイティがゆっくり手を伸ばすのに合わせて、だんだん小さくなる店内の演奏の音。かぶるように、フェードインしてくる「追憶」のメロディと、ハベルとケイティの大学時代の映像。
そこに「THE WAY WE WERE」という文字。
このアバンタイトルのエモさだけで、やられてしまう。

「いや、この2人は合わないでしょ」と観ている誰もが思うだろうが、だんだんエピソードが重なるうちに、応援したくなってくるから不思議。
そのベースには、ハベルとケイティの、「作家」と「一番の批評家」という一点で結ばれた強い信頼感が、互いに揺るぎないということがある。
ハベルは、貧しいケイティが、バイトと学生運動の間をぬって、努力に努力を重ねて作品を書き上げたことを知っている。
その、悔しいはずのケイティが、彼の作品を認めて、なおかつ、ズバリと痛いところを指摘してもくれる。
何でも割と簡単に手に入ってきた人生だったからこそ、チヤホヤしてくれる人たちはいても、こうしてリスペクトをもって、ぶつかってきてくれるケイティが、ハベルにとってはかけがえのない存在になっていったのではないか。
とにかく、互いに才能は認め合いながらも、もっと気楽にユーモアを楽しめというハベルと、曲がったことが許せないケイティ。
どっちもそれぞれ若く、純粋なのでぶつかるのだが、自分はその真っ直ぐさに惹かれてしまった。

ラストの切なさ加減も、とても好み。

ロバート・レッドフォード追悼第二段として、今作もとてもいい作品だった。

<ここから、ちょっとだけ内容に触れます>

・一昨日観た「素晴らしき哉、人生」と同年に公開されて、アカデミー賞をとった「我等の生涯の最高の年」の看板が途中に出てきて、ちょっとした伏線になっていた。俄然観たくなってしまったので、近いうちに観てみたい。

・酔ってベッドで寝ているハベル。そこにケイティが入り込むのだが、その後ろに流れるのは、どこからか聞こえてくるイン・ザ・ムードで、ちょっと笑った。

・ケイティの家に飾られているものに興味を引かれた。玄関に貼ってあったポスターはGoogleレンズで検索したら、Domitry Moorというソ連のプロパガンダポスターをたくさん制作した人のHelpという作品らしいことがわかった。寝室に飾られていたのは、レンブラントの水浴の女だと思うが、これはハリウッドの新居にも持って行って飾っていたから、お気に入りなのだろう。他には、ゴッホの自画像もチラ見で見えたし、ロートレックっぽい作品も見えた。

・レーニンとスターリンの肖像と、ルーズベルト大統領の肖像もあわせてリビングに飾るというのが、中々複雑な気がしたが、ケイティにとっては、反ファシズムで一貫しているということなのだろうか。(ユダヤ系ロシア人の家族のもとに生まれ、熱烈な民主党支持者だというバーブラ・ストライサンド個人と重なっているのかいないのかは不明だが)

・今作が作られた1973年は、アメリカのベトナム戦争からの撤退があったり、冷戦の緊張緩和がみられた時期だったことも、こうした描写につながっているのかもしれない。もう少し詳しく調べてスッキリしようと思う。

・ラストシーンの背景に映し出される「BAN THE BOMB」というメッセージと共に、「NO MORE NAGASAKI」「HIROSHIMA NEVER AGAIN」の文字は、素直にうれしかった。

sow_miya
ひなさんのコメント
2025年9月26日

sow_miyaさま
コメントありがとうございます😙

レッドフォードの訃報がショックで、少しずつ映画を思い出しているのですが…

この映画を母から教えてもらって、10代で最初に観た時に理解できなかったのが、どうしてハベルがケイティを好きになったのか?でした。

ケイティが2人の出会いから、20年後のラストの再会まで、ずーっとハベルを愛していたことは理解できました。

この映画をふと思い出すことがあると、ハベルがケイティに惹かれた理由も、ケイティは本当は再婚していないことも…思い当たるようになりました。

映画の2人の「私たちが辿った道」を、私も私なりに辿ってきたからだと、レッドフォードの訃報でようやく気付きました🥲

ひな
ひなさんのコメント
2025年9月26日

sow_miyaさま
共感とコメントありがとうございました🙂

レビューにGoogleレンズが登場したら、無敵ですね🧐

>「追憶」は大好きな映画で、勝手に記憶の中で作り上げていた部分があったので訂正いたしました。

他のレビュアーさんから、とてもエモーショナルなコメントをもらったのに消えてしまって、その理由を尋ねた時のお返事でした😙

私のレビューが引用ばかりなのも、多分同じ理由からです🤭

ひな
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