「2007年度最低映画はこれで決まり」ベクシル 2077日本鎖国 瑠璃子さんの映画レビュー(感想・評価)
2007年度最低映画はこれで決まり
開始2分で眠くなった映画である。
久しぶりにここまで最低な映画を無料で見られたことについて、まずは神に感謝したい。しかし試写会場へ行くまでにかかった交通費についてはとりあえず返していただきたいが、徒歩参加なのでそれではタカリになってしまうのだった。とにかく金返せ映画です。見たい人は運よく道端にDVDが落ちていることを祈ってください。そんなこんなでベクシルです。
話は馬鹿でかい洋館で禿げたおっさんと各国首脳?陣を交えた会議が行われている場面から始まる。机上会議が粛々…と思いきや突然各国首脳?陣は倒れ伏す。不敵に笑うハゲオヤジ。そこへヘリから米国特殊部隊“SWORD”が降下。館へ侵入と同時に相手のマシン部隊が応戦、だが特殊スーパーパワードスーツ(パトレイバーのレイバー似)を着込んだ彼らは無問題なのだった。(この辺で気がついたら寝ていた)華麗かつ激しいアクションが繰り広げられる中、冒頭で死んだと思った各国首脳?が無事保護される。しかし様子がおかしい。その隙にスキンヘッドは逃亡。逃げる際に切り落とされた彼の足一本だけがその場に残る。
残された足を解析するとどうやら禁止物質が使われているらしい。禿げたおっさんは日本人だった。その頃日本はハイテクマシンバイオテクノロジー関連で大きな影響を誇ったが、国連はその市場独占っぷりと技術に対する重大な危険性を危惧し、日本に対して厳密な国際協定ならびに禁止条約締結を突きつける。日本側はこれを拒否。国連を脱退し鎖国。以後輸出入?(輸入している描写はなかったように思えるため)のみ諸外国と対応し、レーダー等を用いたハイテク機器を駆使し完全に接触をたった。それより10年。この出来事と日本からの船が到着する港において工作員と思しき日本人との接触をきっかけに、ついにアメリカは日本潜入を決断する。白羽の矢がたったのは、“SWORD”のベクシル、レオンその他数名。なんとか潜入したが待ち受けていた日本側の攻撃によりベクシルを除いた仲間はほぼ壊滅状態となり、彼女だけからくも海へ逃れる。気がつくとベクシルはバラックで保護されていた。目を開けると少年と若い女。少年はタカシ、女はマリアと名乗り、レジスタンスであることを告げる。「日本は大和重鋼という一企業に支配されており、国土はここを除いて砂漠地帯、国民は強制的に人体機械化実験を施された」大和重鋼が行ったナノテクノロジーウィルスによる人体実験のせいで、日本国民はもれなく生きながらにして機械化されており(X-MENでこういう設定あったなテクノオーガニックウィルスかよ)、それが脳にまで達すると人間性は失われ、壊れた機械同然となってしまう。そして他の地域では人を含む生物絶滅、というマリアの告白に驚いたベクシルが外に出るとそこはまるで終戦直後の東京のように荒廃し完全に退化した「ニッポン」だった。(ALWAYS 三丁目の夕日!!)高い塀に囲まれた向こうは、機械生体となった挙句くず機械に成り果てた元人間たちが、仲間を求めて金属であればなんでも食いつく巨大なクリーチャー通称「ジャグ」(砂の中からミミズのような形状で口だけバックリこんにちは。トレマーズやスターウォーズででてきたモンスターっぽい)となっていた。レジスタンス活動に加わる決意をしたベクシル。マリアとその仲間たちとともに高い塀の向こうにある大和重鋼の本社を襲撃する計画をたてる。だが自治区を形成している生き残りのわずかな日本人は、マリアたちを密告することを決断する。ベクシルの運命は?またマリアほか日本国民の運命は?どうなる日本国家!!!(テキトウ)…とかなんとか煽ってみたがたいした話じゃないです。
で、この映画、なんていうか、どうやら近未来では人種交配がすすみアメリカ人であるベクシルと日本人レジスタンスであるマリアが同じ顔だちになっているんですが、まあプチ整形に励んでいる諸君は来世に期待しようってことを言いたいのか。それはアレですが、しかしアメリカ人と日本人は髪の色まで同じなので、唯一違う目の色で判断せなならん有様。だいたい宇宙世紀0079年においてすら、白人と黒人とアジア人の区別がつくというのに、たかだが現在より70年後の世界の癖にずいぶん遺伝子操作技術が進んでんのね、とか、なんで10年間鎖国状態の日本人とアメリカ人が出会ってすぐ会話できんだよ!などと脳のユルんだ酔っ払いみたいに叫んでみたくなるほどお約束がお約束として成立していない、つまり設定の甘さ際立つコク旨味ってやつです。こうなってくると実はベクシルは日系人で残された家族を探しに…とかなんとかありがちなエピソードがあるのかと思いきやそういう決め細やかなフォローはない。そんなものを期待してワクワク我慢汁噴出しとった私が馬鹿でしたと小さい目で見つめたくなるがそりゃしょうがないよベクシルだものと「みつを」っぽくまとめてみた。まあいくらぐだぐだ文句たれたところで、それなんてALWAY(ryみたいな闇市の光景を目の当たりにしたベクシルが「なんて人間味にあふれた熱い街なの!」とか叫ぶ姿を見た瞬間、この映画の価値は決まったようなものなんだけど。
下手なアテレコについてはまあいいでしょう。この前「フラガール」みても思ったけど、松雪泰子は演技うまいし声もいいのにどうしてこう報われねえのかね。カンジョーめいっぱい詰め込んだワクワク演技(黒木メイサ)や、ヤル気という存在の耐えられない軽さ演技(谷原章介)やらはこの手の駄目映画に非常によくマッチングしていて違和感がないのだが、フツーにソツなく巧く立ち回れてもなあ。ゴミタメに青磁下蕪花生があったとしても中島誠之助だって面倒くさくて見逃しますよ、といったらほめすぎであるとは思うけんども。
正直ある程度流れを追っていると、ストーリー紹介でも多少触れたが、既視感みなぎる映像カットなので、結末もだいたいこんな感じだろと予測をしていたのだが、それが悪い意味で裏切られる結果となってしまったのには吃驚のあまり帰ろうかと思った次第。全てはマッドサイエンティストが勝手にたくらんだことでした、日本国民は全員無駄死にしました、なんだよそれ!こういうバカ結末をみるために109分も我慢しなきゃいけねえのはなにかの罰ゲームとしか思えない。そんな暇があるんだったら寝ていたほうがマシだとは思うが映画館で寝ても仕方ないのでよい子はおウチにかえってパジャマにきがえてからね!しまじろうとの約束だよ!って何の話だったっけ。そうそうベクシル。
どこかの映画監督かオタクか忘れたけれども「すでにネタは出尽くした、あとはいかにうまくパクるかだ」ってことに私は同意する。やっぱりそんなもんですよ。でもねえネタ元はどこか探す楽しみを用意するってことと、見た瞬間に「ああこれって…」ってモロダシボロリハミチンハミマン(無修正希望!!!!)になるのとは根本的な差異があるってことにどうやらこの映画のカントクさんはお気づきにならないらしい。以下俺ちゃんと一緒に見たヤツとでカウントした疑惑のパクインスパイア箇所をネタバレ上等で列挙してみる。
「超強力な装甲を纏った特殊部隊」(デザインはパトレイバー?)
「企業が地球的規模の悪事を働く」(FF7)
「特殊部隊の潜入先が人里離れた洋館」(バイオハザード)
「敵幹部が黒スーツグラサン坊主」(FF7)
「敵が逃走時に体の一部を切断」
「三丁目の夕日的人情系の街住民は全部ロボット」
「突如発作を起こして死亡」
「ナノテクウィルスで全身機械化」(X-MEN)
「人間の尊厳をかけて機械勢力に抵抗」(マトリックス、ターミネーター)
「砂漠から巨大ワーム」(スターウォーズ、トレマーズ、砂の惑星)
「砂漠で枠組み剥き出しの車が爆走」(マッドマックス)
「仲間の子どもが死ぬ」
「マッドサイエンティストが私怨で暴走」
「恋人(♂)が捕われ、あわや肉体改造」
「街の住民が突如集団自決」
「黒幕は既に肉体が変容してたと思ったら生身」(寄生獣)
「崩壊する基地から脱出」(聖マッスルなど)
「ヘリポートで決着」
「ヘリの中でラブラブ」(プレデターなど)
このあたりが即綺羅星のごとく脳髄に浮かんでしまうのです。(ほかにもあるんだろうけど思い出せない。)
これがマイケルベイあたりならウンザリするほどのアクションシーンの連続でそんなことを考える暇も与えてくれなかったり、押井守アニメ作品のように元ネタを考えるのも嫌になるぐらい膨大にぶちこむとか手はいろいろあるのだが、もっとも曇りなきマナコでまっすぐに(安直ともいう)インスパイアされた結果こんなことになってしまった。「攻殻機動隊」→「マトリックス」のような幸福な結婚をみるためには、「ベクシル」を含む不完全なハンパものを浜の真砂の如く生み出さなきゃならないとしたら、映画って本当に(観客製作者ともども)因業かつソテキ搾取システムですね。俺らが払った木戸銭は流れ流れてどこどこ行くの?なんちて。