ベクシル 2077日本鎖国 : 映画評論・批評
2007年8月14日更新
2007年8月18日より丸の内プラゼールほかにてロードショー
緻密さを極めた視覚的表現やディテールに見応え
日本独自のフルCGアニメのスタイルとなった、モーション・キャプチャーとトゥーンシェーダーを組み合わせた“3Dライブアニメ”という形式も、さほど違和感なく受け入れられるようになってきた。本作の監督である曽利文彦がプロデュースを務めた「APPLESEED アップルシード」(04)の時よりも、キャラクターの質感が洗練されているからだ。
一般にアメリカのフルCGアニメは、親子の和解や友情など小さな世界をテーマにするのに対し、日本の作品は主人公1人に全人類の命運が託される。今回も例外でなく“大和重鋼”の巨大な陰謀に、ヒロインのベクシルが立ち向かう。導入部は非常に緊張感があり、米国特殊部隊“SWORD”たちが決死の思いで潜入した鎖国下の日本の情景も衝撃的だ。戦争直後のような混沌とした東京の街並みは、店に並べられた商品1つ1つに至るまで作り込まれ、街の住人などエキストラ的な群集までもが、精密にモデリングされ細かい演技をしている。こういった緻密さを極めた視覚的表現は映画全体に見られ、無数の機械部品の集合体が襲ってくるジャグという怪物のディテールも見応えがある。ただ、重要な場面で何が起きているのか分からなくなってしまう個所がいくつかあるのと、結末の展開がどうにも弱いことなど、演出面においてやや難を感じてしまう。
(大口孝之)