「.」1408号室 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
.
自宅にて鑑賞。同じ原作者S.キングによる『シャイニング('80)』が呪われたホテルだったのに対し、本作は謂わば呪われた一室(部屋)を描く。小気味良くスピーディーに展開し、テンションが途切れる事無くラスト迄見させる。S.キングお得意のトラウマとの対峙と克服、愛する肉親や家族との別離が盛り込まれている。物語がほぼホテル内の一室で展開するので、視点がブレる事が無い分、スケール感に物足りなさがなくない。ただ変化の乏しい舞台で飽きさせずラスト迄、惹き附けたのは評価に値する。ラストは好みの分かれる処。65/100点。
・振り返ってみると、(特に問題の部屋に入室後)まるで何度も繰り返す明晰夢を延々と見せられたかの様な印象を受けるが、幻想的でさえあれ支離滅裂に感じないのは、恐らく作り手の理性が働いているからであろう。もしその抑制が効いていなければ、観るに堪えない酷い出来になっていたと思われる。
・そもそもS.キングがライターズブロック(スランプ)に陥った際、記したノンフィクション『小説作法 "On Writing: A Memoir of the Craft"』において、草稿を修正する方法の一例として数頁文のみ発表したのが原作を書くきっかけとなった。その後、この物語にS.キング自身、興味が湧き、原作を書き上げた。
J.キューザックの“マイク・エンズリン”がマイクロレコーダーに語り掛ける「このベッドで何人が寝た? その内、何人が病気で、正気を失ったのは何人だ?」云々の科白は、原作が収録された短篇集『幸福の25セント硬貨 "Everything's Eventual: 14 Dark Tales"』内でS.キング自身による自作への解説が元になっている。
・この物語は、超常現象のの合法的科学調査機関"O.S.I.R."のメンバーの一人であるC.チャコンが調査したニュース・コレクションの中から心霊ホテルとして有名なカリフォルニア州のホテル・デル・コロナドと詳細が非公開扱いとなっている東海岸のホテルのレポートから着想を得ている。S.キングは今や古典となったH.G.ウェルズの短篇小説『赤い部屋(赤の間) "The Red Room"』を自分流に書いてみたかったとインタビューで答えている。
・良くも悪くも本作は、“マイク・エンズリン”を演じたJ.キューザックの一作──彼のリアクションや演技力をどう観るかで評価が大きく変わってくる。よく観ると、彼は終始どの場面でも同じ靴を履いている。当初。この役はK.リーヴスにオファーされた。
・元々、K.ウォルシュは“リリー・エンズリン”役で参加していたが、TV用医療ドラマ『グレイズ・アナトミー』シリーズ('05~)出演とのスケジュールで調整がつかず途中降板し、M.マコーマックが引き継いだ。この役に腰から上のショットが多いのは、クランクアップ迄の撮影期間中、M.マコーマックが妊娠していたからである。
・ラスト近くに消防士が使用する斧は、『シャイニング('80)』で使われた物と同じである。これはロンドンの同じスタジオで撮影された為であると云う。
・序盤で、S.L.ジャクソンの支配人“ジェラルド・オリン”と面談の際にプレゼントされるコニャックのラベルには"Les Cinquant Sept Décès(仏語で「57の死」の意味)"と表記されており、支配人曰く問題の部屋で56人が亡くなっているとの発言から、J.キューザックの“マイク・エンズリン”が室内で待ち受ける運命が暗示されてる。尚、DVDには別ヴァージョンのエンディングが収録されている。
・DVD再生時のランタイムは、104分8秒(1:44:08)となっている。本作は「13」に関連付けされている──本篇で説明された通り、通常13階の表記は避けられる為、実質この部屋は13階に在り、ルームナンバーの和(1+4+0+8)でもあり、部屋のキーロックには"6214(6+2+1+4)"と銘記されている。最初の犠牲者は1912(1+9+1+2)年に出ており、ホテルの所在地はニューヨーク州レキシントン・ストリート2254(2+2+5+4)とされている。尚、米国内での公開は'07年6月(0+7+6)であった。
・鑑賞日:2017年10月22日(日)