明日への遺言のレビュー・感想・評価
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「品格」を問われる今だからこそ。
第二次世界大戦後、撃墜された米軍爆撃機の搭乗員の処刑の罪を問われ、BC級戦犯容疑で起訴された東海軍司令官岡田資中将の法廷闘争の実話を描いた映画です。岡田中将は、この法廷闘争を自ら「法戦」と名づけて戦いました。
この映画まで、岡田資中将の事は全く知りませんでした。非常に興味深いのは、岡田中将は、数多くの日本の戦犯裁判において、米軍による都市爆撃を国際戦時法規で違法とされている無差別爆撃であると立証したほぼ唯一存在であるという事。このことは、岡田中将を裁く法廷を指揮したラップ裁判委員長が、公正に裁判を指揮したと言うこともあるかもしれませんが、岡田中将の「全ての責任は、自分にある」と言う「法戦」を戦う姿勢も影響しているのかもしれません。
実話、しかも裁判を描いた映画なので、場面がほとんど法廷で代わり映えせず、始めのうちはちょっと退屈な印象を与えますが、物語が進み、岡田中将の成し遂げようとした事が明らかになるにつれ、ちょっとした感動を覚えるとともに、物語に引き込まれていました。終わってみれば、「え、もう終わり」と言うくらい、時間が短く感じました。
大岡昇平の「ながい旅」が原作なのですが、驚くほど原作に従っています。原作本に出てきたセリフがそのまま、映画中で語られるほど。これには、ちょっとビックリ。また、最後の、岡田中将への判決言い渡しの場面では、MPではなく、第一騎兵師団の部隊記章を付けた兵士が付き添うんですが、これって、正しいのでしょうか?(後日追記:法務将校の人手不足のため、兵科の将校・下士官も裁判に借り出されたことはある模様。ただし、映画のように法廷警備まで実施したかは不明)
竹野内豊がナレーションを務めています。ただ、ちょっとどうかなぁと言う感じです。何故だか、時々、涙で声を詰まらしたような感じに聞こえ(そんなことは、無いはずですが)、違和感を覚えました。
いまこの時期に、何故この映画なのか?と思いましたが、「品格」を問われることの多い今だからこそ、この映画なのかもしれません。奇しくも、イージス護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」衝突し沈没した事故がありましたが、これこそ、その指揮官の品格を問われる出来事。防衛省・自衛隊の幹部に、ぜひ見てもらいたい映画です。
内容が内容だけに、お年寄りが多かったですね。
映画 「明日への遺言」 を観ました。
第二次世界大戦終了後、B級戦犯裁判をたった一人で
戦い抜いた岡田資中将の誇り高き生涯を描く感動作。
敗戦直後の混乱の中で自身の責任と信念を貫き通した
岡田中将を、ベテラン藤田まことが熱演する。
小泉堯史監督作品らしく、真摯で重厚な見応えのある
映画でした。
とにかく藤田まことさん演じる岡田資中将の存在感が
圧倒的でした。
ほぼ全編が、岡田資中将のB級戦犯裁判の法廷劇でしたが
無差別爆撃の責任を問うなど、その内容も興味深く、
検事、弁護人、裁判官、そして被告の岡田中将の演技が見事で、
グイグイと引き込まれるのを感じました。
岡田資という人のことは、多少は知っていましたが、
まさに高潔にして、その信念に一点の曇りもない軍人ぶりに
昨今の”品格”、”誇り”が取りざたされる、現代の日本人に
響くものがあることでしょう。
ですが、私は観終わって少々居心地の悪さを感じました。
それは、あまりに岡田資を立派に描き過ぎていて、かつてこれほど
誇り高き日本人がいた、ということに印象が尽きてしまうこと。
房の中においても正座を崩さず、極刑の判決を受けた後ですら
平静を保ち、若い兵士たちを励まし続ける岡田。
一人きりになった時ぐらいは、もう少し苦悩する人間臭い姿を
見せても良かったのではないでしょうか。
日本人の私がこう感じたぐらいですから、欧米の方々は
この岡田の姿にどう思うのか、非常に興味のあるところです。
冒頭に出てきた、戦争の悲惨なニュース映像こそを
しっかりと目に焼き付けておきましょう。
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