劇場公開日 2007年6月23日

「喪があける森。」殯の森 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0喪があける森。

2008年2月3日

泣ける

悲しい

怖い

昨年のカンヌ国際映画祭(審査員特別グランプリ)受賞作品。
どこかでかかるんじゃないか(近場で)と思っていたんだけど、
その気配がなく、名画座か?と思っていたらNHKでかかった。
それを録画して…しばらく経って^^;やっと観ることが出来た。

この監督の作品は以前もカメラドールを受賞しているらしいが、
観たのは初めて。ものすごい独自性をゾッとするほど発揮する、
いかにもカンヌの審査員が好みそうな作品…という感じがした。
その映像センスとドキュメンタリータッチの構成が、なんとも
いえない空気感を醸し出しているため、観る人を選びそうな…
なんというか、万人受けする作品ではないな。そんな感じだ^^;

ただ、この人の描きたかったことはその映像から真っ直ぐ伝わる。
実にシンプルでよけいな説明など何もない。どうぞ観てくれ!
それが最初から最後まで一貫している。その潔さには拍手喝采。
迷いのない構成は、それが監督が最も描きたい真実だったから
なんだと冒頭のインタビューで分かった。
自身の育ての親?といわれるお婆ちゃんとの同居生活と介護、
その実際を自分が肌で感じたことをありのまま映像にのせている。
認知症にしても、よく映画で描かれる美しい呆けなんてないのだ。

33年前に亡くした妻を想い続ける認知症のしげき(うだしげき)と、
幼子を失い、介護福祉士としてやってきた真千子(尾野真千子)が
深い森の中で殯(喪上がり、ともいう)の儀式を行う幻想的な風景。
大切な何かを失った人間には、それをどうにか表現することでしか
埋められない哀しみがある。無理に忘れようとしなくても、いずれ
時が解決してくれることではあるが、いま渦中にいる人間の想いを
どうしてあげればよいのか。それは他人には計り知れないことだ。

難しいテーマを、これまた唯我独尊状態で描いた^^;力作だけど、
物事を表現する力とそれを観客が楽しむ想像力に、ひらきがある。
エンターテインメント性を求めるか、独自性をさらに追及するか、
監督ならずとも、深い森を彷徨ってしまうようなテーマですね^^;

(私はけっこう好きかもしれないな。冒頭の長まわしは異様に重厚。)

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ハチコ