劇場公開日 2007年6月16日

ハリウッドランド : 映画評論・批評

2007年6月12日更新

2007年6月16日よりシャンテシネほかにてロードショー

三流役者の苦悩と葛藤をベン・アフレックが見事に体現

時代のイコンとして刻まれるほどのヒーローは、その存在が輝かしければ輝かしいほど暗い影を落とす。出自を隠し続けた戦後の英雄、力道山は刃の前に倒れた。高度成長期の象徴でもあったウルトラマンには、利潤追求を優先する制作会社によって、造形の生み親である芸術家・成田亨の存在が消されかけたという闇がある。1950年代に爆発的な人気を博したアメリカンヒーロー、スーパーマン。超人を演じた俳優が謎の死を遂げた事実をめぐり、本作は“虚構の世界”周辺の住人たちの、心の闇という暗い森へ分け入っていく。

かろうじて映画の都ハリウッドが神秘のベールに包まれていた50年代とは、台頭し始めたTVへの転身を都落ちと見下していた時代。理想は気高くとも食えない俳優にとって、ブラウン管の中のヒーローを演じることは何とも屈辱的で、その反面あらゆる欲望を満たしてくれる魅惑的な体験であったかという屈折が、ノワール調の画面に活写されていく。三流役者の苦悩と葛藤を、俳優として壁にぶち当たるベン・アフレックが体現し、えも言われぬ悲哀を感じさせる。

ハードボイルドの名作「チャイナタウン」よろしく気だるい空気の中に危険な香りが立ちこめ、うらぶれた私立探偵が真相を究明する重層構造によって示されるいくつかの他殺説の中でも、妻を寝取られた業界の黒幕の怨念は最もリアルだ。しかし真実は、利害関係にある人たちが全てこの世を去ってからでなければ明らかにならないだろう。ヒーローの死をめぐる闇は、ますます黒く濃くなった。

清水節

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