「クライマックスの無いサスペンス映画」ゾディアック shinさんの映画レビュー(感想・評価)
クライマックスの無いサスペンス映画
未解決事件を取り扱うと本来こういう展開になるのかもしれない。NHKの未解決ドキュメンタリー番組があるが、犯人像に迫ったり、犯人を取り逃したり、犯人の生い立ちがドラマティックに描かれていたり、役者さんたちがドラマのなかで迫真の演技で再現してくれている。
本作にも多少熱い演技で犯人探しをしていたが、基本的に謎解きのシーンは淡々と訥々と語り合っているので、いつ盛り上がるんだろうと観ていると肩透かしを喰い、睡魔と戦い続けることになる。
でもそれが未解決事件を題材にした映画ということなのだろう。何しろ犯人はわかっていないし、動機もわかっていない。あくまでも憶測の段階でしか犯人に接近していないし、犯人と疑われたアレンは逃げようともしていない。唯一盛り上がりそうな場面は犯人がテレビを通して電話で会話するシーンだが、あの内容が事実に基づいているのだとしたら、盛り上がりようのない会話だった。
これはドキュメンタリーではない。しかし“未解決事件を扱った事実に基づいた映画‘’と謳われしかも猟奇的な殺人事件である。何やらドキドキハラハラするんだろうと期待値はあがる。確かにドキドキハラハラはし続けた。そのドキドキハラハラを一瞬だけ満たしてくれたシーンは、ロバートとアレンが対峙した瞬間だけだった。
さすがデヴィッドフィンチャー。見事に観客の期待を裏切り未解決事件を再現してくれた。
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