「ゾンビ作品の金字塔」28週後... R41さんの映画レビュー(感想・評価)
ゾンビ作品の金字塔
2008年当時 雑誌で見た「新感覚ゾンビ作品」としてこの映画が取り上げられていたのを思い出した。
つまり2度目
凄まじい感染力の速さに加え、従来のゾンビの設定が夢遊病者のように緩慢であるのに対し、フィジカルモンスター的に全速力で追いかけてくる設定は恐ろしい。
この作品は「28日後」の続編として描かれているが、登場人物は違う。
そして内容も濃くなっている。
このゾンビに被せるように設定されている物語の因果関係が非常に意味深に思える。
その中心人物が父であるダン
ようやく収まった最初のパンデミックから、ダンが引き起こした2度目のパンデミック
映像では指揮権はすべてイギリスに応援に来ていたアメリカ軍、または両軍にあるように見えるが、実際には特権階級があり、軍の指揮下をまったく無視して行動できることがわかる。
この穴こそ、まさにヒューマンエラーの根源
この特別枠は、いつも事件を引き起こす。
そしてこのダン
彼はゾンビに追われながら最後に妻アリスを見捨てる。
これが因果として最初のように描かれているが、実際一家の大黒柱として家族を養い守る重責は非常に重く、もうダメだとは言えないのが一般的だ。
この重責の中発生したパンデミックと、スペイン旅行へ行って離れ離れになった子供たち。
ようやく住む場所を見つけたのに、ゾンビ集団が襲ってきた。
あの状況下で妻を守ることは非常に難しいと思うし、概ね無理だろう。
パンデミックが収束して返ってきた子供たちに話したことは、方便であって嘘ではなかったように思うが、実家で母を発見したことから、姉のタミーは父が母を見捨てたと思った。
このことはダンの方便が嘘に変身した瞬間だったが、ダンにも自責の念がない訳ではない。
だから特権を駆使して妻が収容されている場所に潜入した。
アリスは感染した保菌者だが、発症しない特徴を持っていた。
これがキュアに繋がる可能性があった。
おそらくアリスも、あの状況下でダンが逃げたことに対し、卑怯者だとは思っていない気がした。
助かったという想いと再び子供たちに会えた喜びと、感染者という不安が入り混じり、夫に対する冷めた気持ちまで感情が動きにくかっただけだったように思った。
しかしダンは安易に「許された」と思い込んだことで、二次感染とパンデミックへとつながるのがこの物語。
この夫婦間の裏切りのような事案の背景には、ダンが今まで家族を養い守ってきた「疲れ」を感じる。
ダンは心のどこかで「自由になりたい」と思っていたのだろう。
最後の行動にはそう言ったことが現れるのだろう。
必死で一般地名を守ろうとしたドイル軍曹
彼らを逃がすために仲間の火炎放射器で焼かれる。
この犠牲心は、すべきことを全うする強い意思からくる。
逆に、ダンはアリスを見捨てた。
それ故、ラスボスのように描かれている。
ゾンビになったダンが執拗に子供たちを追いかけるように描かれるのは、ダンこそ自分が家族の犠牲者だと日々思っていたからだろう。
父が普段からそう思っているのをタミーは潜在的に感じていたのだろう。
母を見捨てたことを糾弾し、最後は射殺することになってしまう。
さて、
「28日後」の冒頭で描かれていたウィルスの根源のサル
特殊な実験に使用されていたようで、奇妙なのは世界中のネガティブな出来事のニュースがたくさんのモニターから流れていたこと。
彼らがいったい何をしていたのか?
この「28週後」でも描かれなかった。
ウィルスが一体何者なのかさえわかっていない。
ただ、両目の瞳の色が違ったアリス、そしてアンディには感染しても発症しない特殊性が現れた。
2002年から2008年 この間に練り込まれた脚本
伏線から回収まで意外に早いという特長がある。
そして前回よりも格段に面白さが増した。
この作品を軸に考えると、その後の作品はすべて亜種に感じてしまう。
恐るべしゾンビ映画だった。