無ケーカクの命中男 ノックトアップ : 映画評論・批評
2008年12月16日更新
2008年12月20日よりシネマミラノにてロードショー
埋められない男女の溝がトホホな笑いで浮き彫りに
新進TVキャスターとグータラ男が、一夜の火遊びで“デキちゃったカップル”に。自分が童貞なのをひた隠す40男の悪戦苦闘が笑いを誘ったアパトウ監督の前作「40歳の童貞男」と違って、これは女性には最初は感情移入しにくい物語。なにしろ、美貌のヒロインのお相手は、イケメンとはいえないうえに、ろくに仕事もしていないグータラ男。「女優がオッパイを見せる映画」の検索サイトを一緒に立ち上げようとしている友人たちとの会話も、小学生レベルのエロ話が中心というくだらなさ。脱力はするけど、笑ってられない。
でも、そのくだらない会話こそが、アパトウの最大の魅力! ダメ男たちのみならず、男性陣が漏らす言葉のかずかずは、どれも男の本音のはず。埋められない男女の溝をトホホな笑いで浮き彫りにするあたり、アパトウはおバカ・コメディ界のウッディ・アレンというべきか。気がつけば、グータラ男にそこはかとない愛が湧き、アメリカ好みの前向きな愛のメッセージにほっこりさせられている次第。おかげで、SEXシーンでも入浴シーンでも絶対にオッパイを見せない主演女優ハイグルの往生際の悪さも、笑って許せてしまう。いや、もしかしたら、これもアパトウ流の笑いの仕掛けかも?
(杉谷伸子)